新妻が探偵に依頼したのは一晩限りのセックス!? 人妻と探偵の禁断の恋のゆくえは……

マンガ

公開日:2018/12/21

『婚外カルテット―探偵と人妻―』(芒其之一:著、寒竹泉美:原作/笠倉出版社)

 不倫は犯罪ではないが、民法上は不法行為である。どんな事情があろうと、するほうが悪い。不倫にはとくに手厳しい昨今、「どんな事情があろうとだめなものはだめ!」派も少なくないとは思うのだが、どんな感情を抱くかによって人の性質が見える気がする。その意味で『婚外カルテット―探偵と人妻―』(芒其之一:著、寒竹泉美:原作/笠倉出版社)は格好の踏み絵かもしれない。

(C)芒其之一/笠倉出版社

 主人公は飛鳥井美花。タイトルからもわかるように、人妻だ。しかも、新婚。楚々とした雰囲気の彼女が、話しかけたのがもう一人の主人公である探偵の峰岸怜。「なんでもしますよ!」という仕事の売り込みを真に受けて、頼み込んだのがなんと「一晩限りのセックス」だ。どうやらわけありらしい美花に押され、峰岸はホテルに行くのだけれど……というのが本作の始まり。まあ、普通に考えて彼女の行動は「なし」。初対面の男とみずからゆきずりで、なんて人妻じゃなくても好意的になれない人は多い。だが、夫の裏切りを知って悩んだ末での行動だったとしたらどうだろう?

 見合いとはいえ、新婚で、夫のことが大好きだった美花。差し入れを手にうきうきと勤務する病院に行ってみたら、別の女とキスしている現場に遭遇してしまうのだから、たまったものじゃない。しかもこれは2話以降で明かされるのだが、浮気相手は美花の××だ。ただ不倫されるよりもはるかにひどい。

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 夫や彼氏に、異性がらみでイヤなことをされたとき、やりかえしたことのある経験をもつ女性は少なくないだろう。一晩限りのセックスや浮気でなくても、たとえば女友達と2人きりでのオールナイトや、女の子を含むグループ旅行。自分はこんなに傷ついているのだから、仕返しするだけの権利はあるはずだ! と勢い勇んで暴挙に出るも、たいていは事後にむなしくなるだけだ。それで夫/彼氏の行動が改善されるわけではないし、罪悪感だけが残る。へたすれば自分のしたことだけ責められて、亀裂がさらに深まってしまうことさえある。だが……むなしくならない場合が、一つだけある。当て馬のつもりで接触した異性に、心をもっていかれてしまったときだ。

(C)芒其之一/笠倉出版社

 美花の場合は、心というより、身体ごと奪われてしまった。一晩限りのセックスに快楽なんて求めていない。だけど峰岸とのそれは、夫なんて比べようもないくらい満たされるものだった。ジャンル的にはTLマンガに相当する本作、やはりこのあたりの読み応えがなくてはおもしろくない。可憐で内気な人妻が、峰岸によって花開いていくさまは女性が読んでいてもちょっと興奮する。しかもチャラくて適当そうに見えて、意外と紳士な峰岸のキャラもいい。美花に煽られるだけ煽られて、理性を吹っ飛ばすその雄ッ気も。

 カルテットというからには、おそらく今後は夫とその不倫相手も参戦してくることが予想される本作。濃密な1話からその続きはかなり期待させられる、注目の一作だ。

文=立花もも

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