昔と今では育児の常識が違う!祖父母デビューのときに用意したい“孫育て本”

出産・子育て

公開日:2018/12/20

『NHK出版 なるほど! の本 孫ができたらまず読む本―子育て新常識から家族とのつき合い方まで』(宮本まき子/NHK出版)

「目に入れても痛くないほど、かわいい存在」——祖父母デビューをしたときは、そんな気持ちを抱く人も多いものだ。孫は、我が子とはまた違った愛おしさを感じさせてくれるだろう。

 高度経済成長の一翼を担った「団塊の世代」や、バブル期と長い経済低迷期の両方を経験した「ポスト団塊世代」が続々と祖父母デビューを果たしている近年。育児の常識はここ30年ほどで急激に上書きされてきたため、家族とうまく付き合いながら孫をかわいがっていくには、自身が知っている子育て論をアップデートする必要がある。

 そんなときにおすすめしたいのが『NHK出版 なるほど! の本 孫ができたらまず読む本―子育て新常識から家族とのつき合い方まで』(宮本まき子/NHK出版)だ。本書は孫を中心とした大人たちとのお付き合いマナーブックであり、古い育児ノウハウから脱却したミニ育児本でもある。

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 孫を取り巻く環境はとてもデリケートだ。何気ない言動によって、今まで築き上げてきた息子夫婦や娘夫婦との関係が壊れてしまうこともある。だからこそ、親心も尊重した「孫育て」ができるようになっていこう。

■妊婦への気遣いは“孫育て”の第一歩に

 初孫ができると嬉しい反面、「自分はどんなことに携わっていけばよいのだろうか…」と悩んでしまうものだ。しかし、そんなときは祖父母ならではの視点から孫を慈しんでいこう。

 中でも意外と重要なのが、妊娠中の関わり方。「妊娠した」という報告を受けると嬉しさのあまり、自分でも気づかないうちにお嫁さんや娘さんにプレッシャーのかかる言葉を投げかけてしまうことがある。

「元気な子を産んでね」「男の子だといいわね」「高齢出産なんだから気をつけてよ」。こうした言葉は、妊婦の身近な人ほどかけてしまいがちだ。しかし、一番不安な思いをしているのは出産を控えている当人である。不安をあおるのではなく、体調を気遣う言葉をかけてあげよう。

 また、妊娠初期は人によって、つわりに苦しむ時期であるため、「食べられそうなものはある?」や「何か作って持って行こうか?」など、具体的な手助けを提案するのもよい。こんな風に妊娠中からお嫁さんや娘さんに「あなたを大切に思っている」と伝えられたら、スムーズな関係も築きやすくなる。

 そして、妊娠や出産の主役はあくまでも息子夫婦や娘夫婦であるからこそ、出産する医療機関や出産方法などを否定せず、見守りながら協力していくことも大切。近年では、母体の血液を採取して赤ちゃんの遺伝子を解析する「新型出生前診断(NIPT)」も登場しているが、そうした検査を受けるかどうかの判断もゆだねていこう。

■昔の育児常識をアップデートさせよう

 待ち焦がれた孫が誕生すると、自分の経験を活かして子育てを手伝いたくなるのが祖父母心。しかし、昔と今では子育ての常識が変わってきているので、あらかじめ注意しておこう。

 例えば、昔は赤ちゃんが泣いたときすぐ抱くと「抱き癖が付く」と言われていたが、現在はむしろ抱いたほうがよいと言われるようになってきた。そのため、祖父母側は息子夫婦や娘夫婦が泣いている赤ちゃんを抱いても、自分たちの常識を押し付けないようにしていこう。

 また、トイレトレーニングも昔は1歳半ぐらいから行い始めていたものだが、今では自分でできるようになるまで待つのが主流になってきている。おむつを取る必要がある場合も、トイレに関する絵本などで興味を持たせ、楽しく進めていくことが推奨されている。祖父母は孫に絵本を読んだりトイレに関心を持たせたりと、自分にできる範囲の孫育てを行っていこう。

■祖父母の「ヒヤリハット」は必ず伝えよう

 息子夫婦や娘夫婦の育児に対して祖父母が口出ししてしまうと、関係がぎくしゃくしてしそうに思えるが、中には積極的に伝えたほうがよいこともある。それは、かつての自分が子育て中に経験した「ヒヤリハット」だ。

「ヒヤリハット」とは、事故にはならなかったが、「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりした出来事のこと。ベランダに出ている最中、ヨチヨチ歩きの子どもに窓の鍵を閉められてしまった。料理中にハイハイしたばかりの子が足にまとわりついてきて危なかった…といったヒヤリハット体験は、育児書にはない教訓となる。こうした教訓を伝えることは、孫と親の命を守ることにも繋がっていく。

 なお、ヒヤリハットを話すときは具体的な対策もセットで提案するのが理想。本書では「我が家の危険度」もチェックできるようになっているので、水回りや火の回りなどを確認しながら、息子夫婦や娘夫婦と一緒に対策を練っていくのもよいかもしれない。

 昔と今では育児の常識や子どもを取り巻く環境が大きく変わってきているため、孫育てデビューをする祖父母は戸惑うこともあるだろう。だが、「孫だけでなく、息子夫婦や娘夫婦も大切にしたい」と思いながらサポートを行っていけば、気持ちは届くはず。孫たちの幸せを夢見る全国の祖父母たちは、人生の収穫期にもう一働きして、「孫育て」という豊かな「置き土産」を残していってみよう。

文=古川諭香