ラスト20ページに号泣する! 純粋に誰かを想う。アンドロイドと人間の切ない恋愛

文芸・カルチャー

2018/12/17

 恋なんて、エラーみたいなものだとつくづく思う。やるべきことに手をつけられず、その人のことばかり考えてしまう。障害の多い恋ほど燃え上がる。冷静なときであれば、そんな選択は絶対にしないということばかりする。生き物としては、明らかに不利な感情だ。神様は、いったいどうしてこんな感情を作り出したのだろう?

『アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う?』(青谷真未/ポプラ社)の主人公、佐藤真白は、義肢装具の製作や装着、リハビリテーションに特化した病院で、受付の仕事に就いている。定時後、業務を終えた彼女が向かうのは自宅ではなく、病院の中の「備品室」。そう、彼女は、食事の代わりに充電を必要とし、脳の代わりに人工知能を搭載したアンドロイドなのだ。

 病院のスタッフは、真白がアンドロイドであることを知らない。真白は、病院の経営母体である医療機器メーカーによって生み出され、アンドロイドが人間社会に適用できるかどうかの実用実験として病院で働いている。

 そんな真白は、ある日、病院の庭でトランプを切る青年・響に出会う。

 事故で両手と右足を失くし、義肢を使っている彼は、リハビリのために病院に通っていた。純粋でおおらかな響と触れ合ううちに、真白は自分の中に生まれた感情を意識し始める。本来なら圧縮して保存しておくはずのデータの、響の関わるところだけが鮮やかに再生される。特定の人物について繰り返し考えるなんて、今までにないことだった。

 同僚に聞けば、それは「恋をしている」のだと言われる。アンドロイドとしての真白をサポートする技術者は、「エラーかもしれない」と言う。アンドロイドは恋をしない。そういうふうにプログラムされていないからだ。

 深刻なエラーだと判断されれば、真白は回収されてしまい、病院には戻れない。そうなれば、もう響に会えなくなる。けれど、あるはずのない恋心は、どうしようもなく膨れ上がってしまった。人間に害を与えない、虚偽の報告をしない、命令には従う、それがアンドロイドに課せられたルールのはずだ。しかし真白には、ずっと抱え続けていた疑問があった。「アンドロイドは、人間になれると思いますか?」。それに対して、響はこう答えてくれたのだ──「なれると思う」。いよいよ真白の回収が決定したそのとき、ふたりは…。

 考えてみれば、自分自身、「自分は何者なのか」という問いかけに、きちんと答えられる自信はない。ただ先人も、「我思う、故に我在り」と言った。たとえ自分が何者であろうとも、今、それを考えているということが、自分を自分たらしめるのだ。誰かを想う気持ちだけは、まぎれもなく本物だ。

 アンドロイドだろうが人間だろうが、恋をしたことのある魂ならきっと共感できる、切なくてピュアなラブストーリー。恋とはおそらく、明日へと踏み出すための光なのだと思える1冊だ。

文=三田ゆき