笑顔は3秒キープ! 口元を鍛えて“感じのいい人”になる方法

暮らし

公開日:2018/12/20

『口元を鍛えたら 話していて“感じのいい人”になれました。』(春原弥生/KADOKAWA)

 小学生の頃、教科書の朗読が嫌だったという人は少なくないだろう。私も教師から、もっと大きな声でとか、もっとハッキリとなどと何度も云われ、ますます声が出なくなったものである。そうなると、つい自分を緊張しやすく人見知り、今で云うところのコミュ障な性格と思い込み、性格は簡単には変えられないと諦めている人もいるのではないか。しかし実は、極めて技術的な話なのだ。

 本稿で紹介する『口元を鍛えたら 話していて“感じのいい人”になれました。』(春原弥生/KADOKAWA)は、転職した会社で「感じ悪い」と云われたことにショックを受けた32歳の女性主人公が、話し方講師のもとで指導を受けるという設定の実用コミックで、「精神論」ではなく「トレーニング」によりコミュニケーションの向上を目指す。

 まずは口の両端、口角を上げる練習から。いわば笑顔を作るトレーニングだ。限界まで口角を上げると、鼻の横の頬が盛り上がるので、そこからさらに1~2mm上げてみる。講師役は、そのさいに鏡を見ながらやるよう勧めていた。次に「イー」「オー」と声を出すのだが、5秒かけて「イー」と口を横に開けたら10秒キープし、同じく5秒かけて「オー」の形にしたら10秒キープすることで、表情筋を鍛える。やってみると、表情を作る筋肉が衰えていては、人間は笑顔を咄嗟に作ることもできないのが分かるだろう。

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 でも、口角だけ上げた笑顔だと人によっては怖い印象になってしまう。いわゆる「目が笑ってない」という状態だ。そこで次のステップ、目の印象をやわらかくするトレーニングをする。これもまた鏡を見ながらやると、自分が思っている以上に目の周囲の筋肉が自由に動かないことに気づくだろう。大事なのは、目を動かすのではなく「目の下」の筋肉を持ち上げる動作で、これまた案外と難しい。本書では、目の下を上げては戻すの繰り返しを初めは10回、それから増やしていき30回程度できるのが理想としている。それから、目を大きく見開いて5秒キープし、反対に目を閉じるのではなく細めて5秒キープを繰り返し、さらに左右の眉毛を両手で上下に挟んでマッサージするのと、左右から挟んでマッサージすることで「眉間のコリを取る」ということをする。

 こうして笑顔を作れるようになったら、その笑顔を挨拶などで人に向けてやってみよう。講師役は主人公に、「笑顔は3秒キープを心がけて」とアドバイスしている。その理由は「人は最初の3秒でその人の全体的な印象をとらえてしまうから」だそうで、短いようでいて3秒は長く感じるものの、心の中で数えることは気持ちを落ち着けるのにも有効に思えた。そのうえ、人間には他人から認められたい、尊重されたいという「承認欲求」があり、笑顔を向けることは相手の承認欲求を満たすことにつながるため、講師役は「笑顔は人間関係にもっとも効果的よ」と述べている。

 さて、挨拶した後にも「照れずに目を合わせるには」とか「蚊の泣くような声は卒業」(原文ママ)など、トレーニングの項目はまだまだある。しかしいずれも、鍛えればできることばかり。私自身は、趣味で演劇を始めてから本書に載っているようなトレーニングをする機会に恵まれたけれど、普段の生活でこれらを人から教えてもらうことは無いだろう。それこそ学校での朗読のように、教師に指名されクラスメイトの前でといった状況では、いくら大きな声でハッキリとなんて指導されても、緊張すれば喉が締まり、ますます声が出なくなる。本当に必要だったのは、「滑舌をよくする極意」や「人前でドキドキしなくなるには」といったことだったと思う。本書は同様の悩みを抱えている人はもちろん、子供たちを指導する立場の人、子育てをする親たちにも読んでもらいたい。

文=清水銀嶺