「おそロシア」のイメージが180度変わる!? ロシアのおいしい食卓事情

食・料理

2018/12/19

『おいしいロシア』(シベリカ子/イースト・プレス)

 ロシア料理と聞いて、何を思い浮かべますか?

「ボルシチ、ピロシキ、あとは、キャビアを食べながらウォッカをがぶ飲み?」といったイメージでしょうか。ほかの料理、たとえばイタリアンやフレンチと比べると、ロシア料理のお店は多くないので、身近なものではないと感じる人も多いのではないでしょうか。本稿ではロシアの家庭料理がふんだんに登場する『おいしいロシア』(シベリカ子/イースト・プレス)から、ロシアの日常を少し覗いてみましょう。

■ロシア版ロールキャベツは、タネのつなぎに意外な食材を使う!

 本書の主人公は、日本人リカ子と、ロシア人の夫(作中では、デカい熊にデフォルメされて描かれており非常にカワイイ)の国際結婚カップル。夫の日本留学をきっかけに知り合った2人は、日本で結婚して新婚生活をスタートさせますが、ある日、夫から「いい経験にもなるから、1年ぐらい一緒にロシアに住もうよ!」と提案されます。

 夫の提案に、戸惑うリカ子。というのも、これまで夫から聞いていた話から、ロシアに対してすっかり、“おそロシア”というイメージを持っていたのです。でも結局、「まあ、夫の祖国だし、1年ぐらいなら住んでみてもいいかな」と、夫の地元であるサンクトペテルブルクに住むことに。ソ連時代にはレニングラード(「レーニンの町」という意)という名前だったこの都市は、世界三大美術館のひとつであるエルミタージュ美術館を擁するなど、ロシアの文化的中心地として栄えています。

 ロシアでの生活に少しずつ順応していく中で、リカ子は日本でもおなじみの料理に出会います。それは、“ロールキャベツ”。ロシアでは「ガルプツィ」と呼ばれ、ポピュラーな料理のよう。せっかくなのでロシア風レシピで作ってみようと、動画サイトでレシピを調べてみると、冒頭から驚きの内容でした。タネのつなぎに“炊いた米”を使っていたのです。米が主食の日本ではパン粉を使うところ、パンが主食のロシアでは米を使う、というのはおもしろいポイント。タネを茹でてキャベツで包んだ後は、フライパンで焼き、ソースと一緒に煮込めばできあがりです。

 そしてもうひとつの驚きは、ロールキャベツの別バージョンである「レニーヴィエ・ガルプツィ」。直訳すると、“なまけ者のロールキャベツ”。こちらは、千切りにしたキャベツと、炒めたタネ(丸められてはいない)を一緒に蒸してできあがり!というお手軽なもの。もはやロールキャベツとは呼べないのでは?というツッコミも入りそうなズボラメニューですが、ちゃんとロシアの家庭料理として存在しているのでした…。

■「食」を入口に、ロシアに近づいてみよう!

 本書では、ボルシチやビーフストロガノフなど、日本でもおなじみのロシアの家庭料理が、丁寧なレシピとともに紹介されています。読むとどれも素材の味を活かしたシンプルな調理法であることがわかり、日本の家庭でも作りやすそうに感じるでしょう。ロシア料理でしばしば添えものとして登場し、味を確実に格上げしてくれる「スメタナ(サワークリーム)」も日本で入手できる手軽な材料(本書内でご確認を!)で再現できる小ワザが紹介されているので安心です。

 丁寧に描かれた登場人物や料理は全ページがフルカラーで見ているだけでも楽しく、ずっと手元に置いておきたくなります。ロシアのスーパーでの買い物事情や、結婚式での様子、歯医者を受診した時に感じた事など、一時的な旅行ではなかなか味わえないご当地エピソードもふんだんに盛り込まれているので、読むとなんだかジモティ気分が高まるかもしれません。「食」を通じてロシアがぐっと身近に感じられる、そんなコミックエッセイです。

文=水野さちえ