嵐の櫻井翔さん親子がスゴイ理由とは!? 肩書が教えてくれるあの人のステイタス

ビジネス

公開日:2018/12/20

『出世と肩書』(藤澤志穂子/新潮社)

 肩書がつくと、つい名刺を配りたくなるものだ。一方で、受け取った名刺の肩書を見て「どれだけ偉いんだろう?」とか「どんな仕事をしているのか?」と、疑問に思うこともあるだろう。

 じつはスゴイ人と仕事をしていたのに、そうとは知らずに「ヘマをした」のでは、もはや後の祭りだ。そんなことになる前に一読しておきたいのが、『出世と肩書』(藤澤志穂子/新潮社)だ。

 著者は、産経新聞の現役記者で、これまでに民間企業の社員、重役、経営者、官公庁の官僚、政治家など、さまざまな人物たちと接してきた。その中でも特に、官僚たちの肩書ヒエラルキー(いったい誰が偉いのか?)を理解するのが、「いちばん厄介だった」と明かしている。そこで本書を、民間企業、官公庁、永田町、叙勲、外資系の各編に分け、それぞれにどんな出世と肩書が用意されているのかを、民間とも比較できるようにまとめている。また、著者が取材を通して知り得た、歴代人物たちの悲喜こもごものエピソードも交えながら、出世と肩書にまつわるエトセトラを解説してくれる内容だ。

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■人気グループ嵐のメンバー、櫻井翔さん親子がともにスゴイ理由

「民間企業編」では主に、「取締役会」「監査役会」「社外取締役」などの、複雑多岐化するエグゼクティブたちの世界を、その業務内容や収入なども交えながら、わかりやすく解説する。また、一般企業とは異なる肩書や部課名を持つ金融業界やマスコミ・広告業界を取りあげ、その内部事情を教えてくれる。

 本書がいちばんボリュームを割くのは「官公庁編」で、その筆頭に紹介されているのが「事務次官」という肩書だ。

「事務仕事で二番手」をイメージさせるその名称から、「一般企業だと部長クラス?」などと勘違いされそうな肩書名だが、事務次官は府省のトップ。つまり社長以上のスーパーエリートであり、国家にかかわる重責を担う役職なのだ。

 ちなみに著者は、この事務次官という肩書に対する人々の理解が進んだのは、「人気グループ嵐のメンバー、櫻井翔さんの父、俊さんが総務省の事務次官に就任(2016年6月に退任)して以降ではないか」と指摘する。そう、櫻井親子はどちらもスゴイのである。

■女性の出世・重役登用の道が開けているのは官・民どっち?

 事務次官になれるのは、官僚(キャリア採用試験をパスしたエリート)のみで、出世競争のふるいにかけられながら、その座を目指す。それだけではない。本書によれば、事務次官になれるか否かは、担当大臣や首相官邸の意向にも大きく左右されるそうだ。

 本書には、政治家たちとの駆け引きも含む、官僚たちの出世競争のリアルが、詳細に記されている。将来「官僚を目指したい」という就活生は、ぜひ本書を参考にしてその世界をチラ見してみてはいかがだろうか。

 また、女性のキャリアプランにおいて、官・民のどちらがより出世・重役登用の道が開けているのかについても、著者はいろいろな根拠を提示しながら「官」に軍配をあげている。その点も就活生には大いに参考になるだろう。

 さて、事務次官は各省でトップのはずだが、「外務省だけは例外」だと著者は記す。そして同省内で、事務次官より格上な肩書として「駐米特命全権大使」と「駐英特命全権大使」をあげている。いかに日本が、米英両国との結びつきを重視しているか、その外交政策をまさに象徴するのが、外務省の肩書ヒエラルキーなのである。

■これからのトレンドとなる外資系肩書「CDO」ってなんだ?

「外資系編」には、さまざまな横文字の肩書が登場する。中でもこれからのトレンド肩書として紹介されているのが、「CDO」と「CLO」だ。

「CDO」は、Chief Digital Officer=最高デジタル責任者で、ネット販売に力を入れる企業を中心に広がりつつあるらしい。

「CLO」はChief Legal Officer=最高法務責任者で、弁護士資格が必要。外資系では、企業内弁護士がCLOとして経営陣の仲間入りする傾向にあるという。

 本書には他にもさまざまな上級職の肩書が登場する。いまの日本社会の構造を、出世や肩書を切り口にして学べることが本書の魅力だ。しかし著者は決して、肩書社会を全面的に礼讃しているのではない。あとがきにある著者の言葉を紹介しよう。

まずは名刺を捨ててみよう。いったん「タダの人」になれば、自分はどんな人間で、何が得意で、本当は何がしたいのかが見えてくる。組織の名前なしで人間関係を構築し、名刺抜きで付き合ってくれる友人を大切にしよう。

 出世と肩書はたしかに人生の一部だが、「すべてではない」ということだろう。いつか老いて、すべての出世・肩書が手離れしたとき、自分にいったい何が残るのか。そのことも忘れずに人生の歩みを進めていきたいものだ。

文=町田光