デザイナーになれたと思ったら、異世界へトリップ!! 頑張る女性の読むサプリ「アリアンローズ」注目の新作

文芸・カルチャー

2018/12/20

『冒険者の服、作ります! ~異世界ではじめるデザイナー生活~』(甘沢林檎:著、ゆき哉:イラスト/フロンティアワークス)

〈頑張る女性の“読むサプリ”〉をコンセプトにした女性向けライト文芸レーベル「アリアンローズ」。コミカライズをはじめメディアミックス展開も続々されていて、毎月さまざまな人気作品が発信されている。今月の新刊は、実力派・甘沢林檎がアリアンローズに初登場! 働くヒロインを描くのを得意とする著者の魅力が存分に発揮された作品だ。

 アパレルショップで働きながら、念願のデザイナー職への就職を叶えた美奈は、その矢先に異世界へトリップしてしまう。見知らぬ世界で途方に暮れる彼女を助けてくれたのは、新人冒険者マリウス。親切にしてもらったお礼にと、得意の縫製技能を活かしてマリウスに服を作ると、その服には魔法効果が付与されていることが判明。美奈はたちまち冒険者たちの間で注目のデザイナーとなるのだが…。

 魔導師、侍女、令嬢、聖女と、いろいろな特色を備えたヒロインたちを生み出してきた本レーベルの中でも、今作の主人公・美奈の設定はかなり斬新だ。服飾デザイナーという職人性と芸術性をあわせ持つ専門技術を武器として、身一つで放り投げられた異世界を彼女は楽しくたくましく、ひたむきに生きていく。

 美奈が最初に自分の能力に気づいたきっかけは、宿屋の娘エルナに裁縫を教えがてら作ってみたミサンガだった。そのミサンガに「回復」の効果が付いていることから、製作系の特殊スキルを持つ者、すなわち〈付与魔法使い〉とみなされることになる。糸や布の組み合わせ、美奈の心身状態によって多種多様な付与効果が生まれることも発見し、マリウスのために最強の、文字どおり“勝負服”を作ることを決意。アリアンローズ作品の他のヒロインたちと同じく、仕事や使命、自分独自の夢に向かって邁進する姿が、微笑ましくもリアリティに充ちた筆致で紡がれていく。

 服作りを通して美奈の世界や人間関係が広がっていく一方で、オーダーに応えることの大切さや値段設定の重要さ、趣味ではなく仕事として服を作ることに伴う責任も抜かりなく描かれる。モノ作りの師匠からはときにたしなめられ、自分の甘さを痛感し、歯噛みしつつも一歩ずつ、一歩ずつプロ意識を育てていく。このあたりの描写には『異世界でカフェを開店しました。』(アルファポリス)や『農業男子とマドモアゼル』リーズ(KADOKAWA)で、働く女性の姿を生き生きと描いてきた著者ならではの説得力がある。

 ワンコ系の年下男子マリウスと、ツンデレ系美形の年上男性シルヴィオという2人の対照的な男性との今後の関係も気になるところ。異世界を舞台に、一流デザイナーを目指す美奈の冒険はまだはじまったばかり。ファンタジー小説にして働く女性の共感度大のお仕事小説だ。

文=皆川ちか