ポテトサラダや肉じゃがだけじゃない!「じゃがいも」の魅力を最大限に引き出すレシピ

食・料理

公開日:2018/12/28

『じゃがいも・ブック』(坂田阿希子/東京書籍)

 定番野菜の「じゃがいも」。カレーやポテトサラダ、肉じゃがなどいろいろな料理に使うことができ、さらに保存がきくので常備しておけるのもうれしい。だが、じゃがいもはあまりにも身近すぎて、「脇役」という印象もぬぐえないのではないだろうか。そんな脇役の存在であるじゃがいもの新たな面を発見することができるのが『じゃがいも・ブック』(坂田阿希子/東京書籍)だ。

 本書の著者は、フランス料理店やフランス菓子店で修業し、独立後自身で料理教室を主宰している坂田阿希子さん。テレビや雑誌などでも活躍している人気の料理家だ。タイトルからもわかるように、本書は丸々一冊じゃがいもづくし。どのページを開いても、じゃがいもが主役のレシピが並んでいる。とにかく、どの料理も「おいしそう」なのだ。じゃがいもばかりなのに、なんと美しく洗練された料理なのだろうと感動する。

Pomme de terre
大地のりんご
フランスではじゃがいもをこう呼ぶ。

 まず、はじめに紹介してあるのが「ベイクドポテト」だ。ベイクドポテトとはオーブンでじゃがいもを焼くだけのとてもシンプルな料理で、海外では肉料理の付け合わせとして出されることもある。じっくり時間をかけて焼くだけというシンプルな調理法ゆえ、じゃがいもの種類や食べ方などでいく通りもの楽しみ方ができるのが魅力だ。本書では、焼きたてのじゃがいもに、サワークリームといくら、冷たいバターと塩、焦がしバターとレモンなど、さまざまな食べ方を提案している。「じゃがいもにはマヨネーズ」というイメージを覆されるおしゃれなレシピが満載で、友人を招いたホームパーティーなどでも活躍してくれることは間違いないだろう。

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 じゃがいもの魅力はなんだろうと考えたときに、どんな食材とも調和し、料理のジャンルも選ばないということがまず思い浮かんだ。洋食、和食、エスニックなどあらゆるシーンで活躍し、世界中で親しまれているじゃがいも。世界には数え切れないほどのじゃがいも料理があるという。本書でも、グラタン・ドフィノアやコテージパイ、ベッコフ、カムジャタンなど魅惑的な世界中の料理が紹介され、見ているだけでお腹がすいてくる。主張しすぎず手に入りやすいからこそ、じゃがいもは誰からも愛される野菜なのだろう。

 和食では、粉ふきいもや肉じゃがなどが定番のじゃがいも料理だが、本書ではじゃがいもの和風サラダやチヂミ、きんぴら、ハマグリとじゃがいものスープなどちょっと目先の変わったレシピの数々に心躍る。じゃがいものチヂミ?と首を傾げたくなるが、実際に作ってみたらそのおいしさに感動した一品だ。チヂミを作る際のポイントは、じゃがいもをすりおろしてできるデンプンを使うこと。すりおろした際の水分は捨てるため、特有のもちもち感を出すことができるのだ。一般的なチヂミのレシピでは小麦粉や片栗粉を使用するが、じゃがいも自体のデンプンを使用するこのレシピでは粉類は一切入れない。ぜひ、作ってみてもらいたいレシピのひとつだ。

 じゃがいもと一言でいってもその種類はさまざまだ。身近なところでは男爵やメークインだが、他にも赤い皮が印象的なレッドカリスマやノーザンルビー、黒っぽいシャドークイーンなど、味わいも食感も異なるじゃがいもがある。いろいろな品種を食べ比べてみるのも面白いだろう。また、本書では、蒸して冷凍しておいたじゃがいもの活用術も披露している。蒸した(もしくは茹でた)じゃがいもを細く切って冷凍しておくと、そのまま油で揚げてフライドポテトを作ることができる。一度火を入れているので、生焼けを気にする必要がないのもうれしい。家で作るのが面倒だというイメージがあるフライドポテトが、一気に身近な存在になるだろう。

 定番の家庭料理のポテトコロッケやポテトサラダも、基本的な作り方の後にアレンジバージョンが紹介してあるので、料理のレパートリーを増やすことができるはずだ。少し目先が変わったじゃがいも料理を作ってみたいという人には自信を持っておすすめしたい。料理初心者から上級者まで、じゃがいも好きな人にはぜひとも手にとってもらいたい一冊だ。

文=トキタリコ