2018年、どんな失敗をした?『世界一受けたい授業』講師が伝授する「失敗学」の極意

ビジネス

2018/12/28

『東大式 失敗の研究』
(中尾政之/WAVE出版)

『東大式 失敗の研究』(中尾政之/WAVE出版)は、「失敗学」の講師としてテレビ番組『世界一受けたい授業』にも出演している著者が、日常に紛れ込んでくる違和感からどのように創造を生み出すかをテーマにしている。

 東京大学大学院で機械工学の教授をしている著者は、脳が違和感を感知した時に発される「微弱信号」をいかにキャッチするかが、人生を倦まず弛まず推進していくキーポイントだと説明する。

人生の岐路と言える就職でチャンスをつかむには、まず多方面に好奇心を持ち、バイトでも遊びでも、多くの物事を試すことが大切だ。しかし、筆者が、そのように学生や息子に言うと「興味とか好奇心とかは、実行するのにけっこうエネルギーがいる」と反発される。

 何がしたいのか、どんなふうになりたいのか。夢や将来像は肯定形で語られることが多い。そしてそれに対しては上述の通り、掘り出したり、考え抜いたり、継続したり、何かと困難や面倒が生じてくる。

 本書で著者が提案しているのは否定形の思考方法だ。肯定形と到達しようとしている点は同じものの、考え方一つで行動を起こすのに要するエネルギーは大きく変わる。

 否定形のプロセスには無意識の作用が大きく関わっている。例えば、昼休みに一人で中華料理屋に入ったとする。メニューは自分の決断しだいだ。そこでチャーハン単品を食べたとする。それは同時に、ラーメン、中華丼、餃子、麻婆豆腐、エビチリを食べなかったことだ。「何となく」注文した場合でも、「ラーメンではない」「セットではない」といった否定のプロセスは必ず伴っている。

 違和感はこうした無意識の中に潜んでいる。ドーナツの空洞が無意識だとして、違和感をヒントにひたすら「わからなさ」の闇を壁伝いに歩いていくと、くっきり円形をした「意識」が明らかになる。これが当人の置かれている状況とうまくマッチした時、成功が生まれる。著者は、何の保証もないのに100万円、1000万円、1億円の「実現する保証のない研究予算」を準備していた結果、約10年の間に4回それを利用するに至ったという。

 つまり、無意識を信じて、物事に対する興味関心が自ずと湧くマインドセットを育めば、「自分には関係ない」と何かを放置すること(本書でこれは「最も好ましくない」と指摘されている)を避け、ゆくゆくは創造につながっていく「実現可能性のなさ」に心を注ぐことが可能となる。

生きるということは脳を使うことである。自分が考えたとおりにコトが進めば、脳は満足する。脳内物質を出して気分をよくする。
仮に事態が悪い方向に進むことを予想しても、そのとおりに悪くなったら、仮説が当たったことになって脳は満足する。

 ジェットコースターが急降下するとき、ただ目をつぶって身を任せているのではなく、目を見開いて、それをまだ見ぬアップダウンの流れの一環として捉え、最適な過ごし方をする。そうすると失敗から「誤り」のニュアンスが抜けていくのだ。

 2018年を自分はどのように過ごし、その流れをどのように最大限これからにいかすことができるのか。本書はプロセスの大切さを読者に示し、2019年の道標となってくれる一冊だ。

文=神保慶政