1日17時間半労働の週休0日…残飯の賄い付きで働く8歳の子どもがいるという事実

社会

公開日:2018/12/31

『わたし8歳、職業、家事使用人。: 世界の児童労働者1億5200万人の1人』(日下部 尚徳/合同出版)

 あなたは今の職場の労働環境をどのように感じていますか。「夏休みも十分に与えてもらえず週1日しか休めないときがある」「毎日残業ばかりで朝8時に出勤したら夜の10時まで毎日働き詰め」など“ブラック“と呼ばれるような企業で苦しみながら日々必死に働いている人たちもいることでしょう。そして、そんなブラックで働く友人や家族が身近にいたとしたら同情して心を痛め、どうにか辞めさせてあげたいと思うかもしれません。

 しかし、今この瞬間もブラックのなかでも最悪なブラックと思えるような労働条件のもとで辞めることもできず懸命に働く8歳の子どもがいることを知ったら、あなたはどう思いますか。毎日休みはなく、1日17時間半労働。食事つきではあるけれど、それは誰かが食べ残した残飯で、それも何日も経ったものを食べさせられることもあるという労働環境です。そもそも、労働環境云々をいう以前に、通常であれば家族に養われ、自分のことだけを考えていてもおかしくない年齢でもあります。にもかかわらず、親に甘えることも、学校に行って勉強したり、友達と遊んだりすることも許されずに働かなければいけない子どもがたくさんいるのです。

『わたし8歳、職業、家事使用人。: 世界の児童労働者1億5200万人の1人』(日下部 尚徳/合同出版)はバングラデシュで家事使用人などをして働く子どもたちの労働実態を紹介した本です。子どもたちの厳しく過酷な生活の様子を写真とともに紹介し、問題が起きている原因や課題、また児童労働を改善するために求められる具体的な活動についてまで幅広く紹介しています。

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 児童労働が今も存在するという事実自体は、おそらく多くの人が知っていることでしょう。しかし、ニュースを通して耳にするのはバングラデシュをはじめとした異国の地のことばかり。なんとなく他人ごとのように感じてしまっている人もいるかもしれません。しかし、本書では児童労働をする子どもたちの様子を実際の日々の生活のなかから奥深く取材し伝えているため身近に感じやすくなっています。具体的な仕事内容や家族の事情、子どもたちの声や雇い主たちの考え、1日のスケジュールなどから見えるリアルな現状は、もしわが子だったら、知り合いの子だったらという想像と重ねると、心が締め付けられるようなことばかりです。

 雇い主やその家族から性的嫌がらせや暴力を受けることがあっても口を閉ざし、住み込みでもほとんどの子どもが寝る部屋を与えられず3割以上はキッチンの隅で寝ているといいます。雇い主家族全員分の洗濯ものをすべて手洗いし、自分も子どもなのに雇い主の子どもの世話を仕事とする子どももいるのです。そんな生活をまだ小学校へ通うような年齢の子どもたちが相談する人もなく強いられている環境をブラック以上のブラック、過酷な生活と呼ばずに何と呼べばいいのでしょうか。

 本書を著したのは、東京外語大学講師の日下部尚徳氏。南アジアの貧しい人々の生活問題の解決に向けた活動を主に行うNPOで理事を5年間務め、途上国の貧困や国際協力の実践に関する調査研究にも従事してきています。本書では、国際協力の現場を歩いてきた経験などから児童労働の実態だけではなく、なぜ児童労働が生まれるのか、また、児童労働のある現状を変えるためには具体的に何をするべきなのかといった実践的な情報までわかりやすく解説しています。そして、どうして日本人である私たちが異国の子どもたちを救う必要があるのかといった疑問に対する自分なりの答えを見つけるためのヒントのようなものも述べられているのです。

 日本の人口が約1億2645万人であるのに対して、世界の児童労働者は1億5200万人もいるといわれています。また、本書で紹介した家事使用人として働く子どもたちの数はバングラデシュだけでも約42万人です。これは、東京でいえば中央区民と港区民全員が家事使用人として働いていると考えてもまだ足りない数となります。大阪なら大阪市の福島区と住吉区、東淀川区の人口をすべて合わせた数以上です。

 大人でも辛い過酷な労働を、まだ分別もつかず意見も言えない子どもたちが担っている現状は今日も世界で続いています。児童労働は、実は日本に住む私たちの生活が起因する部分もあったりして決して他人ごとではありません。現場の声をリアルに感じることができる本書を通して、児童労働についてあらためて考えてみてはいかがでしょうか。

文=Chika Samon