「正しい参拝方法」って? 知っているようで知らない「神社」にまつわるイロハ

暮らし

公開日:2019/1/1

『新版 神社のおしえ』(神田明神/小学館)

 毎年正月になると、初詣に出かける人はどれくらいいるだろうか。私自身、正月三が日のうちには、近所の氏神様を参拝するのが慣例となっている。日頃は神社とまったくつながりのない生活を送っているように見える人でも、正月の初詣は欠かさずに神社へ足を運ぶという人は多い。

 古来、日本人の生活にとって、神社の果たす役割は大変大きなものだった。しかし、特に現代の若い人の中には、神社が本来どのような場所であるのかさえ知らない人も多いだろう。神社とはどういう場所かをはじめとして、神社の素朴な疑問にわかりやすく答えてくれるのが、『新版 神社のおしえ』(神田明神/小学館)だ。本書を書いたのは、創建730年、江戸の鎮守として知られる神田明神の宮司。長い歴史と伝統を誇る神社ならではの目線で、神社について詳しく解説する一冊となっている。

 本書はまず、「神さまとはなんですか」という疑問に答える形ではじまる。私たちは神さまの姿を目にしたことがないにもかかわらず、その存在を信じてきたのではないだろうか。「触らぬ神に祟りなし」「困った時の神頼み」など、日頃から使用する言葉にも神は存在している。日本には昔から、自然現象や自然物を神さまとして捉え、敬い祀ってきた歴史がある。たとえば、大雨や地震などの自然の猛威は神さまの祟りと考えられ、神に祈ることでこれらの現象を治めようとしてきたのだ。神社はそのような祈りを神さまに伝える場として民衆の拠り所となっていく。また、亡くなった祖先の霊も「祖先神」になると信じられ、自然や人間の垣根を越えて畏れ多い存在すべてが神さまとされた歴史があるのだ。

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 神社にはあまり縁がないという人でも、人生の節目には神社を訪れる人は多い。初宮参りにはじまり、七五三、成人式、厄払いなど、人生儀礼の折に触れ神社を訪れては、神さまにここまで無事に過ごせたことへの感謝を伝えるのだ。また、神社で結婚式を挙げる「神前結婚式」を行う人も増えているよう。神田明神の神前結婚式では、祝詞奏上、巫女による舞、三献(さんこん)の儀などが行われ、とても厳かで優雅な式になるのが特徴だ。実は、神前結婚式の歴史はそう古くなく、一般的な結婚式と同様、明治時代にはじまったといわれている。

 神社を参拝する際に気になるのが「正しい参拝方法」についてだろう。ここでは、基本的な神社の参拝方法を紹介する。まず、神社の境内にある手水舍(てみずしゃ)で身を清める。古くは、神社の近くを流れる湧き水や川などを利用して身を清めていたが、現在は敷地内に手水舍を設けているところがほとんどだ。

手水の作法
(1)右手で柄勺を持つ
(2)手水鉢の水をすくい、左手を洗い清める
(3)清めた左手で柄勺を持ち直し、右手を洗い清める
(4)右手で柄勺を持ち、左手で水を受けて、口をすすぐ
(5)左手を洗い清め、残った水を柄勺の柄に垂らして清める

 時折、柄勺に直接口をつけている人の姿を目にすることもあるが、これはマナー違反となるので気をつけよう。多くの人が使用するものだということを念頭に置いておきたい。拝礼については、「二拝二拍手一拝」が基本とされる。実は、四拍手する出雲大社のように、拝礼作法が異なる神社も稀にあるようだ。神社の中には拝礼場所に参拝方法をイラストで表示してあるところもあるので、慣れないうちは確認しながらでもいいだろう。それぞれの神社の作法を守り、正しく参拝することが大切だ。

 また、昨今神社のブームといえば「御朱印集め」だろう。御朱印とはもともと、寺社に写経した経文を奉納する際に、その証として授与されたものといわれている。神社に初穂料を納め、御朱印帳と呼ばれる和紙でつくられた帳面に、手書きもしくはハンコの御朱印をいただくのだ。神社に参拝した後に、その証としていただくものなので、御朱印だけもらって帰るといったマナー違反はしないよう気をつけたい。

 本書は他にも、お守りの中には何が入っているのか、おみくじで大凶を引いてしまったらどうすればいいのか、お賽銭には5円玉を用意する必要があるのかなど、誰に聞けばいいのかわからないような素朴な疑問に答えてくれる。どこの地域にもあるが、意外と知らないことが多い神社。本書を読めば、神社がより身近な存在になることは間違いないだろう。何も特別な時だけでなく、日頃から気軽に神社へ足を運んでみてはどうだろうか。

文=トキタリコ