結婚はどうする?子どもはほしい? 長寿社会における「女子力」を改めて考えてみる……

暮らし

2019/1/2

『女子力革命』(萱野稔人:編/東京書籍)

 若者を見る大人たちの目は厳しいものがあります。若者は未熟で何もわかっていない、と大人は思っているのです。「今どきの若者は」というセリフは大人の口癖ですが、これは古代ギリシア時代から続いている伝統的な言い回しのようです。本記事で紹介する『女子力革命』(萱野稔人:編/東京書籍)は、そういう「今どきの」若者たちによって書かれています。津田塾大学の3年生たちによるゼミナールでの研究から始まった考察がまとめられているのです。

 本書の記述で面白いところは、文章の端々に個人的な経験が織り込まれている点。恋愛関係や友人関係、また過去に経験した不愉快な思いも、素直に告白されています。客観的な事実を積み重ねるだけではなく、それを自分の問題として捉えている姿勢は、読み手の心に素直に伝わり好感が持てます。そして、その経験が若さを持ったポジティブな表現で記述されているのです。

 本書のテーマは「女子力」です。巷で語られる女子力は、女性であることを最大限に利用する力のことを指しているように聞こえます。辛口な表現をすれば、いかに女であることを武器にした振る舞いに長けているかが重要なのです。ここには、社会で支配的な存在である男に対して、選ばれる存在としての女という構図が透けて見えます。しかし、本書の執筆者である14人の女子学生たちは、そのような一般的な意味での女子力について論じているわけではありません。まず、現在進行中で、近い将来に激変するであろう、男女の関係を支える社会環境を考察しています。そして、そこから導き出された「新しい女子力」という概念の提案を試みました。それは、女性がその人生の最初から最後まで「自由に生きるために必要な能力」のことなのです。本書で彼女たちがフォーカスしたのは、身体、結婚、労働という、女性を悩ませ続ける3つのトピックでした。

 女性の「身体」の章で触れられているのは、出産と更年期です。出産に関しては、早期出産をすすめ、高齢出産の限界を指摘し、生殖医療に頼りすぎないことを提案しています。女性と更年期の関係については、社会的な存在としての人に老年期が存在する意義や、更年期障害の具体的症状にまで踏み込んでいるのです。

「結婚」についての章では、制度としての結婚を江戸時代の「縁切り寺」までさかのぼります。昭和の時代に農村で行われた「足入れ婚」や、80年代の「花ムコ学校」には当時の世相を読み取ることができるのです。また、近年話題になっている「おひとりさま」が引き起こす老年期の課題を具体的に考察するくだりは圧巻です。

 働く女性であれば避けて通れない「仕事と子育て」を扱う章は、女性が働くことの意義について深く考える材料を提供してくれます。「高齢女子」や「子持ち先生」などの問題に触れつつ、「女性活躍推進法」に対しては冷静な目が向けられるのです。

 これらの文章を読んでいて新鮮さを感じる点は、女の子が大人の女性になるにつれて直面することになるさまざまな問題に、経験のない「若年女子」が答えているところです。経験がないことが、逆に客観的な視点を生んでいます。この種のテーマは、酸いも甘いもかみわけた「大人の女性」が人生経験をもとにして、その持論を展開するのが一般的です。そういう本は、一部の女性には受けるかもしれませんが、男性はほとんど興味を示さないことでしょう。なぜなら、彼らは経験豊富な大人の女の言葉に、微妙な刺々しさを感じるからです。ところが、本書はなんと若い子たちが、未経験のことに関してフラットな視点から論じていきます。

 本書は、女性のことを女性のために書いた本のように見えます。しかし、男性が最も自然に読める女性についての本でもあるのです。いや、男女の関係がフラットになってゆく今後を考えると、男性こそ本書を読むべき主要な読者といえます。

文=sakurakopon