入浴だけで要介護のリスクが29%も軽減!? 毎日できる健康によい入浴法

健康・美容

公開日:2019/1/4

『最高の入浴法』(早坂信哉/大和書房)

 皆さんの入浴スタイルとはどのようなものだろうか? 光熱費の節約や時短からシャワー派もいるだろうし、寒い時期はひたすら熱い湯に浸かっている人もいるかもしれない。入浴時にできる健康法の1つとして入浴剤に凝っている人もいると思う。肌荒れ対策や冷え対策になる入浴剤も多く、確かにそれも良い健康法と言える。筆者の場合、健康的な入浴法として入浴剤に目が行きやすい。しかし、入浴時間や湯温が健康を左右するという内容に驚いたのが『最高の入浴法』(早坂信哉/大和書房)である。

 実際、湯に浸かる時間というのはあまり考えたことがない。浴室に時計はあっても「何分浸かる」という目安にしているわけではないし、湯温設定はそのときの気温で変えることがほとんどだ。体を温めることも考慮するが、いかに冷めにくい温度にするかを優先している。が、寒い時期や冷え性の人でも、湯温を上げればいいということではないらしい。冷え性改善で熱い湯に浸かる人も多いのではないかと思う。しかし、著者である早坂信哉氏によると、これは効果的とは言えないのだそうだ。

 早坂信哉氏は温泉療法専門医であり医学博士でもある。そんな著者が約20年の間およそ3万人を対象に調査した結果に基づいているのが本書だ。

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 早坂氏は本書で、

お風呂は、日本人にとってあまりに身近なもの。そのため気づきにくいのですが、入浴の健康作用は、実は医学的にも明らかにされています。
免疫機能のアップ、自律神経の調整、血流改善、基礎代謝・体内酵素の活性化、精神的ストレスの軽減など、驚くほど様々な効果があるのです。

 と述べている。そう、入浴こそが誰でも気軽にできる健康法なのだ。しかも毎日できる。これはぜひ実践しなければ損というものだろう。

 本書には、症状別に適した湯温や湯に浸かる時間、入り方が丁寧に書かれている。風邪対策に冷え性の改善、美肌効果、眠れないときや疲れがとれないときなど、さまざまな症状や状況に応じた適切な入浴方法を紹介してくれている。それだけではない。意味のない入浴法にも言及している。中でも意外だったのは、半身浴にはほとんど健康的効果はないこと、入浴での発汗にはダイエット効果は期待できないという2点だ。これ、実践している人は多いのではないだろうか。

 タイトルで触れた介護の減少についてだが、これは1950年代~1960年代にかけて家風呂が急速に普及したことをうけて、毎日の入浴が健康につながっているという考え方に端を発している。早坂信哉氏の研究チームで1万4000人の高齢者を対象に調査を行なったところ、毎日湯船に浸かっている人は介護リスクが29%も低かったという結果が出ているのだ。年齢を重ねていくうえで課題になってくる1つに介護がある。子どもの有無にかかわらず、将来介護生活になることはできるだけ避けたいと考える人は多いはずだ。

 本書では、寒い時期の入浴に心配されるヒートショックの予防法についても紹介している。ヒートショックとは温度差が招くもので、死に至ることもある危険なものだ。冷えた体や冷えた脱衣所、冷えた浴室からいきなり熱い湯に浸かることなどが原因として多いのだという。高齢者が浴室で倒れる原因にもなるもので、ぜひ予防したいことの1つだ。

 本書では、自宅でできる入浴法だけを紹介しているわけではない。温泉の選び方や浸かり方についても紹介してくれているのがうれしい。自分の健康状態や気になる症状に合った温泉が解説されているので、どんな温泉に行けばいいのか決める参考になる。本書は、入浴が1日の疲れをとるだけではないことが良くわかる1冊だ。その日の疲れをとりながら精神までリラックスさせ、さらに肌の健康を考えながら健康な一生を送るためのバイブルなのである。美しく健康であるために、最高の入浴が重要なのだ。

文=いしい