長嶋でも王でもなく、なぜビジネス書は野村と落合なのか?

スポーツ・科学

2019/1/4

『決断=実行』(落合博満/ダイヤモンド社)

 野球というスポーツは昔から日本人に人気がある。今でも野球関連の書籍は多数出版されており、なかでも、元プロ野球選手の野村克也と落合博満の書籍はビジネス書としても注目を集めている。なぜ、長嶋茂雄でもなく王貞治でもなく、野村と落合なのだろうか。実はこの2人。稀代の名監督ということ以外にも共通点がある。

 ここでご紹介するのは『決断=実行』(ダイヤモンド社)だ。日本プロ野球唯一となる3度の三冠王を達成し、監督としても4度のリーグ優勝、1度の日本一を成し遂げた落合が、“決断”と“実行”をテーマに余すことなく綴った1冊である。42万部超えの『采配』(ダイヤモンド社)を7年ぶりにアップデート。「最終決定権は誰が持つべきか」「勝てるデータ活用術」「新人や若手の起用で気をつけたいこと」「人材登用における私の考え方」など、ビジネスにも応用できそうなヒントが山ほど詰まっている。

 キャンプに入ってもしばらくバッティングはしない。日本人初の年俸調停。采配の意図や狙いを説明しないマスコミ対応。完全試合目前の投手を降板させる。落合の“オレ流”と言われるエピソードを数え始めたら、尽きることがない。なぜ、このような独自の感性を持ち合わせることができたのだろうか。

■野村と落合の共通点は「2軍」スタート

 冒頭にあげた野村と落合の共通点は、2人とも入団当初はまるで注目をされていなかったということである。長嶋も王も入団当初からスター選手で1年目から1軍で活躍。しかし野村と落合は2軍からスタートし、レギュラーに定着するまでは前述の2人に比べるとやや時間がかかっている。いわゆる叩き上げである。

 野村も落合もレギュラーを奪取するために、またプロ野球という世界で生き残るために研究に研究を重ねている。また、控えの選手であった期間も長いため、そういった選手の心理も把握している。実戦で培った感性と理論があるからこそ、彼らの本はビジネスマンの心に刺さるのではないだろうか。

 本書では落合の選手時代、監督時代のエピソードがちりばめられている。そこから導き出される理論は一種のビジネス書と捉えることもできる。言っていることは理路整然としており、至極腑に落ちる。どうすれば一流選手になれるのか。選手想いとはなんだろうか。どうすれば勝つことができるのか。悩みを抱えるビジネスマンやスポーツ指導者、そして野球ファンにおすすめしたい1冊だ。

文=梶原だもの