東川篤哉・爆笑必至の烏賊川市シリーズ、正体は本格過ぎるミステリー

小説・エッセイ

更新日:2012/6/20

交換殺人には向かない夜

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:東川篤哉 価格:630円

※最新の価格はストアでご確認ください。

東川篤哉という作家、おそらくは「気付き」の天才。誰もがその存在を認めながら、結果ずっと空き家だった分野に気づき、あっという間に他の追随を許さない第一人者にまで成り上がった。その分野、言うなれば「脱力系お笑い本格ミステリー」(^^;)。その中でも特に脱力感が顕著な「烏賊川市シリーズ」の第四弾がこの「交換殺人には向かない夜」。

advertisement

この作家の場合、設定やトリックの部分は幹の太い“王道ミステリー”である。だから、本格ミステリーを書いたとしたら、それもきっと秀逸な作品として仕上がるハズ。しかしそれを良しとせず、マヌケ過ぎるキャラクターやその言い回し、そしてある種とんでもない舞台設定でこちらを笑いの渦に巻き込む。寒いギャグならば呆れるだけなのだが、これが爆笑必至の面白さを保っちゃってるもんだから手に負えない。「騙し」の天才でもある。

この作品、さながら東宝の「怪獣大戦争」のごとく、過去に“烏賊川市シリーズ”を沸かせた主要キャラクターが大挙登場する。さらにミステリアスでやっぱりマヌケ(^^;)な新キャラも現れ、またもや大笑いの中でまぁいろいろゴチャゴチャするのだが、終わってみると結果全ての登場人物が重要なカギを握っていることに気づかされてしまう。こういうところがすごく悔しかったりするのだけど。

この「烏賊川市シリーズ」も、以前レビューした「鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ 」も、もちろん一世を風靡した「謎解きはディナーのあとでシリーズ」も、僕の読んだことのある作品はすべてこのパターン。多少腹が立ってもおかしくないのだが、なぜだかそんな気分になったことは一切ない。

これはもう「偉大なる必殺ワンパターン」。プロレスで言うのなら、アントニオ猪木の延髄切り、スタン・ハンセンのウェスタンラリアット、武藤敬司のムーンサルトプレス等と同等の説得力と安心感・安定感があり、何度同じパターンを見せられても決して飽きることはない。これって、すごいことなんじゃないだろうか?

…心配なのはお笑いのネタ枯れ(^^;)なのだけど、今のところ無尽蔵。こうなったら突っ走れるだけ突っ走ってもらって、誰もが抱腹絶倒のお笑いミステリーを書き続けて欲しい。ついていけるところまではついていくので。


まるで本格ミステリーかのような滑り出しだが、次ページで早くも笑いが!

場面はキャストごとの3パターンだが、ここにもちゃんと罠がある

ワード検索機能がなにげに強力なのがXMDF形式のすごいところ

単語にマーカーを付ける機能あり、ポイントになりそうな登場人物をハイライトしておくと展開が読みやすい

最近ハマっているノート機能、読中にちょっとした感想や気づいたことを記しておくと、読後の整理時に重宝