実は知らなかった!? 人気俳優を続々輩出した平成の仮面ライダーは昭和ライダーとどう違う?

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公開日:2019/1/5

『平成ライダー20作記念! 「仮面ライダー」2000-2018全史』(別冊宝島編集部:編/宝島社)

 30年に亘って続いた「平成」の時代であるが、2019年の5月をもって新元号へ改元される。時代を総括するにあたっては、やはり「昭和」との比較が分かりやすいと思うが、ここでは日本を代表する特撮ヒーロー『仮面ライダー』を取り上げてみたい。なぜならこのシリーズは「昭和ライダー」と「平成ライダー」という、非常に理解しやすい分類がなされているからである。現在、ちょうど「平成ライダー」シリーズは20作めの節目にあり『平成ライダー20作記念! 「仮面ライダー」2000-2018全史』(別冊宝島編集部:編/宝島社)が、その総括の手助けとなりそうだ。

 いわゆる「平成ライダー」シリーズは、2000年から1年かけて放送された『仮面ライダークウガ』を始まりとする。ちなみに「昭和ライダー」のテレビシリーズは、1988年にスタートした『仮面ライダーBLACK RX』をラストとしている。勘のよい人ならお分かりだろうが、実はこの『RX』は「平成元年」と重なっているのだ。『仮面ライダークウガ』にしても平成というよりは、2000年という「新世紀」を意識していた感もあるが、まあ現在は「昭和」と「平成」での分類が一般的である。

 では「平成」と「昭和」のライダーシリーズはどこが違うのか。個人的に感じるのは、まず「俳優」だろうか。昭和の特撮番組の扱いは、いわゆる低俗な「漫画映画」であり、その主演俳優もおよそ大きくスポットの当たるような立場になかった。しかし現在は違う。「平成ライダー」の主演俳優ではオダギリジョーや佐藤健菅田将暉に竹内涼真など、映画やドラマに大活躍する俳優を多数輩出しているのだ。

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 理由はいろいろありそうだが、まずアニメや漫画、特撮といった「低俗な娯楽」が、平成では世界に認められる「文化」となったことが大きい。さらに特撮を観て育った子供たちが大人になり、親子二代で作品を楽しんでいることも挙げられるだろう。こうして「平成ライダー」は幅広い年代から支持され、出演俳優たちもその演技力に注目が集まり、スターダムを駆け上っていったのだ。本書では現在放送中の『仮面ライダージオウ』の主役・常磐ソウゴを演じる奥野壮についてプロデューサーの白倉伸一郎氏が「『ジオウ』という企画を成立させる最大にして最難の要素……それはすでに、ソウゴ役の奥野壮として手に入っています」と最大の賛辞を送っているだけに、平成最後の仮面ライダー俳優にも期待は高まる。

 また平成に入って「ライダー像」も随分と変わった。「昭和ライダー」のライダーたちは、間違いなく「正義の味方」であり「ライダー対怪人」の構図だった。もちろん「平成ライダー」も当初はその方向で作られていたが、2001年に発生したあの「アメリカ同時多発テロ」によって流れが変わる。2002年に放送された『仮面ライダー龍騎』では「正義とは何か?」という命題のもと、犯罪者など悪人たちも仮面ライダーに変身して仮面ライダー同士が戦うという、これまでの概念を破壊するような作品も生まれた。平成では「地下鉄サリン事件」などの大事件や「東日本大震災」などの大災害が発生したが、それらの衝撃は人々が持つ「ヒーロー像」にも有形無形の影響を与えているのだ。

 平成の世が終わっても、新たな「仮面ライダー」は生まれ続けるだろう。そして時代と共にそのスタイルや物語性は変化するだろうが、不変のこともある。それは「ヒーローが人々の夢を背負う」ということだ。現実的な話をすれば玩具の売り上げなどもあるが、やはり「仮面ライダー」が憧れの存在である限り、そのシリーズは受け継がれていくはずだ。

文=木谷誠