母親を殺しそうになって自覚…幻視、幻聴や妄想と闘う“統合失調症患者の日常”

健康・美容

2019/1/13

『統合失調症日記』(木村きこり/ぶんか社)

「みんなが自分の悪口を言っている」「盗聴器が仕掛けられている」…こうした被害妄想や幻覚が現れる「統合失調症」は、思春期や青年期などに発症することが多いとされる慢性的な精神疾患。薬を服用しながら病状をコントロールし、日常生活が営めるように治療していくが、完治は難しいとされている。

 そんな統合失調症は、周囲の人に苦しみを理解してもらいにくいのも特徴。しかし、『統合失調症日記』(木村きこり/ぶんか社)を手に取れば、病気と上手に付き合うヒントが見いだせるかもしれない。

■高校生のときに発症し、受験浪人した著者は――

 著者の木村氏に統合失調症の症状が出始めたのは、高校3年生の頃。当時、美大受験を考えていた木村氏はある日突然、教科書に記されている文字が絵に見えるようになってしまった。病気の発症を機に、成績はダウン。友達関係もうまくいかなくなり、受験にも落ちた。その後は予備校生活を開始したが、芸大を3浪し、引きこもりに…。

 引きこもり中にも幻聴はあり、木村氏はストレスを発散するため暴れ始めた。だが、ある日母親を殺そうとしてしまった自分に驚き、精神科を受診。そこで統合失調症であると診断された。

 統合失調症は、自分には関係のない病気だと思っている方も多いかもしれない。しかし、実はおよそ100人にひとりが発症するといわれている精神疾患だ。この割合は民族や文化、時代などに関係なく変わらないとされている。

 また、統合失調症には症状の幅が広いという特徴もある。患者の中には通院や投薬を行いながら自立した社会生活を送っている人もいれば、自傷や他害の可能性があり、緊急入院を必要とする人もいる。

 統合失調症の発症メカニズムは、まだよくわかっていない。そのため、もしもイヤな声が聞こえたり、見えるはずのないものが見えたりするという場合は、精神科の扉を叩いたり、周囲に相談できる人を作ったりしていこう。

■統合失調症とどう付き合っていくか?

 もし統合失調症であると診断されたら、どうしていいのか悩んでしまうだろう。そんな時こそ、本作を参考にして病気とどう付き合っていくかを考えてみてほしい。

 木村氏の場合は、大学の相談室で臨床心理士やソーシャルワーカーの方にアドバイスをもらっていた。日本ではまだ精神疾患の患者に対して心無い視線が向けられることが多いからこそ、自分の病気を包み隠さず話せる存在が重要なのだ。

 また、もし身近な人が幻覚を訴えたり、被害妄想のような話をし始めたりした場合は、まず抱えている苦しみを受け止めてあげることが大切。落ち着いた環境で、否定せずに耳を傾ければ、当事者も胸の内を打ち明けやすくなるだろう。

 ただし、あまりにも幻覚が酷かったり、話の内容が支離滅裂だったりするときは、専門機関での治療をすすめよう。本人が病院の精神科や心療内科を拒む場合は、心理カウンセラーや職場の相談室をすすめ、治療のレールへ乗せてあげる必要がある。

 統合失調症は、同じく精神疾患である「うつ病」よりも、まだ世間からの理解が得られていない病気だ。ひとりで悩んでいる方や統合失調症患者をサポートしたいと考えている方は、ぜひ木村氏の実体験に触れ、病気との向き合い方を模索していこう。

文=古川諭香