「申し訳ない…」と思いながら働く女子達へ。あるべき姿よりなりたい姿を考えよ!

ビジネス

公開日:2019/1/18

『働く女子と罪悪感 「こうあるべき」から離れたら、もっと仕事は楽しくなる』(浜田敬子/集英社)

 世界144カ国中114位。これは、世界経済フォーラムが2017年に発表したジェンダーギャップ指数においての、日本が位置する順位である。2018年は、その順位が妥当なものであったと納得するほど、女性が立たされている状況を改めて実感した1年だった。

 テレビ朝日の女性記者が財務官僚事務次官(元)から受けたセクハラを告発したニュースから、人命救助のために土俵にあがった女性に対して降りるようにアナウンスされた問題、医大入試で女子生徒の点数が減点されていた問題…。平成の時代もいよいよ終わりだというのに、女性が社会において立たされている環境はあまりにも危うい。

『働く女子と罪悪感 「こうあるべき」から離れたら、もっと仕事は楽しくなる』(浜田敬子/集英社)は、そんな環境のなか働く女性たちにエールを送ってくれるような1冊だった。

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 著者の浜田氏は、朝日新聞社に入社後、記者として女性の生き方や職場問題、国際ニュースなどの取材を中心に活躍。その後2014年に女性初のAERA編集長に就任した。2017年に退社後は「Business Insider Japan」統括編集長に就任、コメンテーターを務めるほか、働き方をテーマにした講演を多数行っている。

■働く女性が抱える罪悪感とは

 本著では、男女雇用機会均等法制定後に入社した著者が、当時の困難な状況を振り返りながら、現在社会の職務環境の問題をあげている。なかでも、あるワーママ(ワーキングママ)の労働環境に関するエピソードは、どこの企業にとっても他人事ではないだろう。

 育児のため時短勤務をすれば半人前と見なされ、子供のお迎えのために残業を断れば上司からため息をつかれる。こんな肩身の狭い環境では、働きながら育児をするワーママは疲弊してしまう。「彼女たちは、周囲が思っている以上に申し訳ないと思っている」と浜田氏は述べている。

 新聞社では、働ける時間が多いほど「使える」「デキる」人間と評価される風潮が未だに強いという。そのため、育児のために働く時間を制限せざるを得ない女性たちは「使えない」という目で見られがちになる。

■「女性の働き方」は刷り込まれる

「結婚や出産をしても仕事を続けるつもりですか?」

 朝日新聞社の入社面接の際に、浜田氏が聞かれた質問だ。「今だったらこの質問自体NG」と浜田氏は言う。しかし、私も就職活動時、よく同じ質問をされた。彼女が就職活動をしていた時期から20年以上経っているというのに。しかしこの20年で、そのような場において同じ質問をされた男性は如何ほど存在するだろう。

 今までは、月曜日から金曜日の9時から5時まで会社で働くのが典型的であった。しかし、さまざまな事情を抱えて働く人が増えている今(育児だけでなく、親の介護をしながら働く人もこれから増加していく)、そのように長時間拘束される労働形態は時代遅れであろう。かつての働き方に縛られず、働き方の選択がより増えれば、誰にとっても働きやすい環境になるはずだ。

 安倍内閣が推進している「すべての女性が輝く社会づくり」。しかし「女性が輝く社会」とは、どんな社会だろうか。仕事に精力的に取り組み、女性初の編集長というキャリアまで獲得した浜田氏は「輝く女性」のひとりだ。しかし、彼女の時代は、女性は男性以上に働いて成果を出さないと会社の中の一員にすらなれない時代だったのだろうとも感じた。

 そのような生き方を選ばなくても、男女ともに負担なく働けるようになっていくのが今後の社会の理想だろう。これから社会に出る世代が、「男だから」「女だから」「こうあるべき」という理由で生き方を狭めることのないように、多様な働き方を提示するのが、我々上の世代の今後の課題であろう。

文=音田アユム