ずっと住んでいるから気づかない? 日本人が見過ごす欠点や問題点

社会

2019/1/22

『「日本バイアス」を外せ!:世界一幸せな国になるための緊急提案15』(パトリック・ハーラン/小学館)

「バイアス」という言葉をご存じだろうか。本来は「偏り」を意味しており、そこから心理学の用語として「偏見」「偏向」という意味を持つようになった言葉である。バイアスはどんな人のなかにもあり、価値観にも大きな影響を与える。バイアスそのものは、避けられないものだが、「バイアスがある」という事実を知らないままだと事実を誤解する可能性が高まってしまうのだ。そして、日本人の多くが抱えている「日本バイアス」は、日本という国を間違った方向へと導いてしまうかもしれない。

『「日本バイアス」を外せ!:世界一幸せな国になるための緊急提案15』(パトリック・ハーラン/小学館)は、そうした「日本バイアス」を外し、改めて日本の問題点を見つめ直そうと試みる助けになる一冊だ。著者のパトリック・ハーランは、お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンとして有名である。アメリカを母国に持ちながら、日本で20年以上暮らしている著者だからこそ見える「日本バイアス」を通さない日本の姿は、この国の将来を考えるあたり参考になるだろう。

 日本バイアスといっても、その種類はさまざまだ。たとえば、「日本人は英語が喋れない」というものがある。たしかに、英語を第二言語に定める他国の人々と比べれば、日本人の英語は決して「上手」とは言えないだろう。しかし、中学高校で身に付けた英語を利用して、簡単な質問に答える程度はできるという人は少なくない。同じことをフランス語やスペイン語でしようとすれば、まったく言葉が思いつかない人のほうが多いはずだ。流暢に話すことができなくても、「英語が喋れない」わけではないから、自信を持ってよいというのだ。そして、必要なのは場数だけだという。だから、まずは「英語が喋れない」という認識から抜け出し、上手ではなくても話してみるのが大事である。

 ほかには、日本の「国力」という言葉に対するバイアスもある。「失われた20年」という言葉が登場して久しく、日本の国力は衰退したといわれてきた。ところが、そもそも「国力」という言葉が何を指すものなのか、よく理解していない人が多い。そして、大抵の日本人は国力を「GDP(国内総生産)」に置き換えて考えているというのだ。だが、GDPでは本当の意味で国力を測ることはできない。世の中には、GDPを生み出すけれど「良くない」ことがたくさんあるからだ。

 例として、「交通事故」が挙げられる。交通事故が起こるとケガ人の治療費がかかり、壊れた自動車の修理費や新車購入費が発生するだろう。これらもGDPを生み出すが、それを理由に交通事故を歓迎することはできない。逆に、GDPでは測れない「良いこと」もある。素晴らしい友人や隣人との交流や公園でのんびり過ごせる時間などはGDPにこそ算入されないが、人々に「幸福」をもたらすものだ。国力をどう測るかは難しい問題だが、少なくともGDPですべてを語ろうとするのは、何らかの「バイアス」が働いていることは間違いないだろう。

 本書では、日本の抱く課題のうち15個を取り上げている。だが、そこにあるのは著者による回答ではなく「提案」である。なぜなら、日本の課題について答えを出すべきなのは「すべての日本人」だと、著者は考えているからだ。大事なのは、日常生活のなかで知らないうちに生まれている「日本バイアス」を理解し、そこからできるだけ離れて問題と向き合うことだ。日本には日本人が見過ごす欠点や問題点がたくさんあるが、同時に日本人が気づいていない魅力や長所も多い。だからこそ、改めて日本の将来を考えるうえで、バイアス抜きであらゆる可能性を考える必要があるというのだ。

 およそ日本人からは生まれないような突飛な提案も少なくないが、「どうしてこの意見をおかしいと思うのか」「それは単なる思い込みではないのか」と自らに問いかけることで、より自由な発想を得るきっかけにできるだろう。より豊かな日本の将来を考えるうえで、本書は大いに役立つ一冊だといえる。

文=方山敏彦