届いたのは、殺したはずの同級生からの同窓会案内状――復讐?それとも裏切りか…登場人物全員クズ!『スクールカースト殺人同窓会』

文芸・カルチャー

2019/1/19

『スクールカースト殺人同窓会(新潮文庫nex)』(堀内公太郎/新潮社)

 一向になくならないイジメ。文部科学省が平成29年度に行った調査によると、小中学校・高校において把握されたイジメの数、不登校の小中学生の数はともに過去最高を記録した。イジメられたことが原因で不登校に追い込まれる生徒は多く、最悪自殺してしまうケースもある。

 被害者の人生を大きく狂わすこのイジメについて、加害者はどのように感じているのだろう。イジメてしまったことを悔い改めて生きている人もいるが、中にはそんなことなどまるでなかったかのように平然と生きている人もいる。そう、『スクールカースト殺人同窓会(新潮文庫nex)』(堀内公太郎/新潮社)の登場人物のように…。

 10年前、ある男子高校生が同級生のイジメにより殺された。しかし、死の真相は闇に葬られ、当時彼をイジメていたクラスカースト上位のメンバーは秘密を抱えたまま平凡に暮らしていた。そんな彼らのもとに、同窓会の案内状が届く。差出人はなんと彼らが殺したはずの同級生で、そこには自分の死の真相を明らかにすると書かれてあった。そして同窓会の当日、殺人事件が起こる――。

 事件を追うのは、自身も同級生であり、カースト上位のメンバーにイジメられて不登校になった過去を持つ女性警察官の永沢南。今回の事件と10年前のイジメとの関係は? そして、同窓会の案内状を出したのは誰なのか? 最後に予想外の真相が待ち受ける、サスペンスストーリーだ。

 一見、弱者が復讐する物語かと思いがちだが、話はそう単純ではない。この小説のストーリーを動かしているのは、人間の醜い感情なのだ。

 この小説の登場人物は、みな性格に難がある。特に、同級生をイジメ殺した田知本、亜友美、勝俣、実帆、氷川、カレンの6人の自己中心的な性格は、高校時代から10年経っても変わっていない。しかも、彼らはそれぞれ不満や問題を抱えていた。

 医者になり裕福な生活を送っている田知本は、常に見下してきた勝俣の息子に自分の息子がイジメられていることにいらだちを募らせていた。一方の勝俣・実帆夫妻は、勝俣の父親から受け継いだ寿司屋の借金を返済するため、頭を悩ませる日々を送っている。また、ホストをクビになった氷川は過去のネタを持ち出しては定期的に田知本を脅し、金を要求することで生活している身。さらに、読者モデルになったものの、大学時代の美人局が暴露されて芸能界から干されたカレンは、人気アナウンサーとして活躍する亜友美を憎み続けており、亜友美のほうでもそんなカレンをうっとうしく思っていた。

 カースト上位の6人以外にも、死んだ同級生の彼女だった梓、亜友美のためならなんでもする奈々緒、彼らにイジメられた復讐をしようと企む樺、雑誌の記者でゲスなネタばかりを集めている環奈など、性格に問題の多い同級生が登場する。彼らは同窓会の案内状をきっかけに、自分の地位を守るため、これに乗じて問題を解決するため、そして相手を陥れるため、動き始める。それぞれの思惑が連鎖し、負の感情が飛び交うのがこの作品の魅力だ。

 作中ではさまざまな登場人物の視点から物語が語られるので、彼らの感情や考え方がありありと伝わってくる。誰もが恨みを買いそうな人間で、読んでいる最中には、誰が黒幕かということとともに、誰が生き残れるのかということも気になってしまった。

 また、この小説のもうひとつの魅力は、イジメられっ子だった南の目線から事件の真相を追うことで、被害者と加害者の認識の差がリアルに描かれていることだ。南はイジメで深い心の傷を負い、10年経った今でも思い出すだけで恐怖を感じてしまう。彼女にとってイジメは、人生に大きな影響を及ぼした出来事なのだ。しかし田知本たち6人は、あっけらかんとして「イジメは過ぎたこと、今さらだ」と言う。その後も南は、事件の調査を続けていく中で何度もそのギャップを感じることになる。果たして彼女は事件を通して何を思うのだろう。

 自分がやったことは全部自分に返ってくる。この小説を読むと、そのことを実感させられる。もし自分を不幸にした人間が次々に死んでいくのを見たら、あなたはどう思うだろうか。

文=かなづち