門脇麦、成田凌、村上虹郎、吉田志織…新進役者たちの演技が光る『チワワちゃん』愛され消費され死んでいく

エンタメ

2019/1/19

 バラバラ殺人事件の被害者は、友達のチワワちゃんだった。本名も、今どこで何をしているかも知らなかったけれど、彼女は確かに友達だった――。門脇麦主演で実写映画化された『チワワちゃん』の原作は、岡崎京子さんの同名マンガだ。

 タイトルのチワワちゃんは冒頭から死んでしまっていて、思い出の中にしか存在しない。だけど思い出す人によって、チワワちゃんの印象はちがう。彼氏に献身的に尽くす家庭的な女の子だったり、誰とでも寝てしまう子だったり、みんなに好かれる人気モデルだったり、AV女優になってお金に困っている孤独な女の子だったり。本当はどんな子だったんだろうとどれだけ探ってみても、どこにもたどりつけない。笑顔やさみしげな横顔、つぶやかれた言葉の数々。断片的な記憶をつなげて、頭のなかで自分だけのチワワちゃん像が浮かび上がっていく。

 だけど人ってそういうものかもしれない。相手によって見せる顔が変わって、自身でさえ本当の自分がどんなふうだったか見失う。誰かと一緒にいることでしか「自分」になれない。つながる相手次第で、自分に自信をもてたり、愛せなくなったりもする。そのはかなさを『チワワちゃん』は浮き彫りにする。

 原作ではわずかな回想でしか登場しなかったチワワちゃんだが、映画ではサイケデリックな色彩のなか、嵐のように人生を駆け抜ける刹那的な女の子として、より立体的に描かれる。愛されたい。幸せになりたい。常に満たされることのない欲望に突き動かされるチワワちゃんは、いつだって過剰なまでに全力だ。無邪気な笑顔と、絶望の落差。吉田志織が演じる彼女の表情一つひとつに、いつどこで間違ってしまったのか、どこで引き返せば彼女は幸せになれたのかと思いを馳せずにはいられない。

 そんなチワワちゃんと対照的に描かれるのが語り手のミキだ。門脇麦が演じる彼女の表情はいつもどこかほの暗い。好きな人もモデルの仕事も、いつも後からやってきたチワワちゃんが奪っていく。頼ってくれる彼女をかわいいと思う気持ちは本当なのに、まっすぐ向き合えなくなっている自分もいるジレンマ。チワワちゃんに片思いし続けるカメラマンアシスタントのナガイ(村上虹郎)も同じだ。絶対に敵わない相手にいつもチワワちゃんを奪われて、ただ陰から見守っているしかできない悔しさ。だがチワワちゃんの元恋人・ヨシダ(成田凌)だって、誰といても満たされない心の穴を抱えている…。チワワちゃんを中心にそれぞれの孤独、解消しきれないジレンマが浮かび上がり、彼らの物語を観客である“私たち”の物語へと変えていく。

 自己愛と承認欲求の吹き溜まりともいえる10代。通り過ぎてしまえばなんて浅はかで愚かだったか気づくけれど、そのときの自分には何も見えない。目の前の現実を生きるので精いっぱいで、自分の存在の不確かさにおびえ、揺れ続けている。そんな彼女たちの生々しい感情を、役者たちの好演とともにぜひ劇場で味わってみてほしい。

文=立花もも

チワワちゃん役・吉田志織インタビューはこちら

●映画情報

ⓒ2019「チワワちゃん」製作委員会

チワワちゃん
2019年1月18日(金) 全国ロードショー!
配給:KADOKAWA