イケおじ好きはたまらない…! 戦いあり、飯テロあり! そしてほっこりする『辺境の老騎士』

マンガ

公開日:2019/1/19

『辺境の老騎士 バルド・ローエン』(支援BIS:原作、菊石森生:漫画/講談社)

 最強の騎士が軍を率い、戦いを重ねていく物語は多数ある。しかし『辺境の老騎士 バルド・ローエン』(支援BIS:原作、菊石森生:漫画/講談社)のように、騎士の引退後を描いた物語というと、なかなかに珍しいケースではなかろうか。

 本作品は、無料小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた王道ファンタジー小説『辺境の老騎士』(支援BIS)が原作。コミカライズ版は現在4巻まで刊行されている。

 舞台は、「大障壁」と呼ばれている壁に囲まれた大陸東部の辺境。その壁には一か所だけ切れ目が存在し、そこから魔獣が侵入するのを防ぐ必要があった。その役目を代々担ってきたのが、切れ目の位置にある「パクラ領」の領主・テルシア家。主人公バルド・ローエンは、このテルシア家に仕え魔獣から人民を守っていた老騎士だ。

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(C)支援BIS・菊石森生/講談社
(C)2016 shienbishop

 しかし50年もの間戦い続け、体力に限界を感じるようになる。そんな中、バルドは隣国のドルバ領を治めるコエンデラ家がテルシア家の財源を狙っていると知り、自身の武力を領土争いに利用される前に、と騎士としての職務から離れて旅に出た。この旅の途中でバルドは、コエンデラ家の刺客に襲われたり、バルドを慕っていた今は亡きテルシア家の姫アイドラ・テルシアからの手紙を巡って戦いを繰り広げたりしながらも、世界中で語り継がれるような偉業を果たしていく。

 そんな誰からも認められる実力を持つバルドだが、彼は非常にグルメな一面も持っており、物語のあちこちに美味しそうな食事が登場する。これも本作品の大きな魅力の1つだ。川でウィジクという大きな魚を釣って下処理し塩焼きにした時も、ふと思い立って身とハラワタを混ぜて食べ、その甘い香ばしさにこの上ない幸せをかみしめる。その全力で美味しさを満喫している表情に、見ているこちらまで頬がゆるんでしまいそうだ。


(C)支援BIS・菊石森生/講談社
(C)2016 shienbishop

 ほかにも、干し肉と乾燥パンのスープ、小麦粉の皮で様々な海鮮を包んだテューティルという食べ物など、「どんな味がするんだろう?」「食べてみたい」と気になってしまう料理が多数描かれている。そしてそのすべてのシーンから、世界観、そしてバルドの「食」を大切にする人間性を感じることができる。

 最新刊となる第4巻では、気になるバルドの幼少期も描かれている。“人民の騎士”“不敗の騎士”と呼ばれるこの男がどう育ってきたのかを知ることで、今までの物語により深みが感じられるはず。もちろん4巻でも飯テロは健在で、思わず試してみたくなる、料理が美味しくなるコツも満載。

 各巻のラストには書き下ろしの小説もついているので、既に原作で内容を知っている人もまだ見ぬ場面を垣間見ることができる。なんだかんだで戦い続きであるにもかかわらず、なぜかほっこりしてしまうこのバルドの旅は、まだまだ続いていく。今後の展開も楽しみだ。

文=きこなび(月乃雫)