クズな詐欺師が狙うのは…“詐欺師”! 詐欺師×御曹司の凸凹コンビが、世に蔓延る悪を叩きのめす!

文芸・カルチャー

2019/1/21

『マネートラップ 三流詐欺師と謎の御曹司(メディアワークス文庫)』(木崎ちあき/KADOKAWA)

「この世に騙される奴がいる限り、詐欺師が食いっぱぐれることはないだろう」――。本作『マネートラップ 三流詐欺師と謎の御曹司(メディアワークス文庫)』(木崎ちあき/KADOKAWA)の主人公は、詐欺が蔓延する世の中をそう語る。いくら世間に詐欺の手口が周知されたとしても、詐欺師たちは新たな“カモ”を見つけ出し、より洗練された手口で彼らを騙すのだ。本作は、そんな詐欺師の世界を題材にし、悪で悪を叩きのめすコンゲーム小説。著者&イラストレーターは、先日アニメ化を果たした人気シリーズ『博多豚骨ラーメンズ』のコンビだ。

 主人公の大金満(おおがね みちる)は、福岡市内で酒、女、ギャンブルにお金を使いまくっている三流詐欺師。彼は、いつものように詐欺のアイデアを思いつき、カモになる相手を探している途中、過去の不始末が原因で謎の組織に捕らえられてしまう。そして、そんな満の窮地を救ったのは、韓国財閥の御曹司であるキム・ムヨンだった。ムヨンは、満を助ける代わりに、ある取引を持ち掛ける。それは、とある詐欺師を騙し、奪われたお金を取り戻してほしいというものだった…。

 満とムヨンは、次々と“詐欺師”からお金をだまし取り、それを被害者へと返していく。その中で登場する手口は、どれも現実にありえそうなものばかりだ。なかでも筆者が驚かされたのは、認知症の隣人から50万円をだまし取った加害者を、逆にオレオレ詐欺にハメる手口。満は、「自分は絶対に騙されない」と思っている人間の心理を逆手に取り、加害者の自尊心をくすぐりながら、見事にその50万円を取り戻す。そこには、鮮やかな犯行へのロマンと、もし自分がやられていたら…という恐怖が同時にあった。

 本作の魅力は、こうしたスリルのある筋運びのおもしろさと、防犯対策にもなる犯罪のリアルさに加え、満やムヨンを取り巻く人間ドラマにもある。「騙される奴が悪い」といいながら詐欺を続ける満と、そんな“騙される奴”を一人でも多く救おうとするムヨン。物語が進んでいくうちに、それぞれの生き方を決定づけた過去も明らかになっていく。彼らは、犯罪とどう関わり、どう生きていくのだろうか。今から続刊が楽しみである。

文=中川 凌