人はなぜ夜空を見上げるのか。それは人は星の子だから…

公開日:2012/4/10

ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:野本陽代 価格:756円

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季節はめぐって夜空も春モード。東の空にはおとめ座のスピカ、うしかい座のアークトゥルス、しし座のデネボラがつくる「春の大三角」がのぼり、西の空にはおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスがつくった「冬の大三角」が降りていく…。

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冬の星座の代表、オリオン座。ベルトの三ツ星や左膝のリゲルと並んでよく知られる右肩の明るい星、ベテルギウス。地球からの距離約640光年、太陽の直径の1000倍もある巨大な星ベテルギウスは、晩年を迎えた超新星で、観測データから爆発の兆候が指摘されている。これが本書のテーマ。では①爆発はいつで、②私たちはどのような光景を目にすることになるのか、そして③地球への影響は…。

これらを要約すると。①は今年、2012年ともいわれているが、いつ爆発するか正確にはわからない。②もし爆発したら、全天でもっとも明るい星になり、もしそれが日中なら、空の一点が急に輝きだしたように見え、明るさのピークは7日目。その後、ほぼ同じ明るさが3カ月ほど続き、5カ月後には金星と、2年半後には北極星と同じくらいの明るさに。4年後には六等級にまで後退し、やがて姿を消す。オリオン座は右肩を失い、冬の大三角形は見られなくなる。③の地球への影響は、ベテルギウスの自転軸が地球の方向からずれているため、爆発によって放出されるガンマ線、X線などの心配はないとされる。このように本書は、ベテルギウスの超新星爆発を、観測データからの知見や超新星の理解に欠かせない星の一生、加えて宇宙論の歴史や超新星が大きな役割を果たしている最新の宇宙研究の成果などまじえて解説する。

人は、なぜ夜空を見上げるのだろう。どんなにつらくうつむき歩いても、それでもいつか必ず人は夜空を見上げる。それはなぜだろう。本書につぎのようにある。

「私たちの身のまわりで見られる元素の数々は、星とその最後を飾る大爆発超新星によってつくられたものです。その意味で私たちはスターダスト(星くず)、星の子であるといえるでしょう」(第3章「たそがれを迎えた星たち」>「一生の最後を飾る超新星爆発」より)

人が夜空を見上げるのは、夜空は人のふるさとだからだ。夜空を見上げるとなつかしいような安らぎを感じるのもそのためだろう。東日本大震災の夜、光をなくした被災地の夜空には満天の星。それは失われた多くの命の輝きだったと思うと、少し救われるような気がする。


「ベテルギウスの超新星爆発」目次

ベテルギウスが爆発すると「冬の大三角」はいずれ見られなくなる

ベテルギウスの爆発はさまざまな憶測を呼んだ。「2つの太陽」というスターウォーズのようなシナリオも

星はどのようにして生まれ、老いていくのか

泡宇宙モデルや加速膨張する最新宇宙論にも言及

「宇宙で一番強い力」はなにか。答えはときに男女間のいさかいの原因になるもの