ポケモンGO、名前募集バーガー…日本マクドナルドをV字回復させた劇薬仕事術とは?

ビジネス

公開日:2019/1/27

『マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す 「劇薬」の仕事術』(足立 光/ダイヤモンド社)

 2014年から2015年、日本マクドナルドは食品への異物混入などの不祥事に次々見舞われた。そんな逆境真っ只中の日本マクドナルドでマーケティング本部長として奇跡のV字回復を起こしたのが足立光氏だ。足立氏はP&Gジャパンやヘンケルなどを経て2015年に日本マクドナルドへ入社、2018年6月に退任した。

『マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す 「劇薬」の仕事術』(足立 光/ダイヤモンド社)は、300億円の大赤字だった日本マクドナルドを31カ月連続の売上増に導いた仕事術が記された1冊だ。

 2016年7月、ポケモンGOがリリースされたのは記憶に新しい。ポケモンGOのリリース当時、なんと日本マクドナルドは世界で唯一のオフィシャル・パートナーとなった。当時かなり新しいスタイルのゲームだったポケモンGO。それに対する莫大な投資を推し進めたのが足立氏だ。日本マクドナルドが投資に踏み切ったのは、足立氏の数々の成功体験に後押しされたためである。

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 足立氏が手がけたのは「名前募集バーガー」「グランドビッグマック」「怪盗ナゲッツ」などの商品。また、ポケモンGOのあとには「マクドナルド総選挙」「へーホンホヘホハイ」なども成功させた。これらを成功させた仕事術とはどういったものだろうか。

 足立氏が日本マクドナルドのマーケティング本部に伝えた「マクドナルドのマーケティング 15の戒律」というものがある。例えば、

・「マクドナルドらしい」おいしさを追求・訴求せよ
・レギュラー品こそが、売上、利益、ファンの根源と心得よ
・モノ(おいしさ)とコト(話題)の両方を揃えよ

といったものだ。

 業績不振の当時、日本マクドナルドは健康志向の商品をキャンペーンとして打ち出していたが、足立氏はまったく逆の方向を示した。マクドナルドの売りは「背徳感」にあるとし、背徳感を持ちながらがっつり食べて楽しめる商品のアピールを進めたのだ。マクドナルドのイメージである「茶目っ気」にも注目し、消費者が楽しいと思える商品やCM、SNS展開を続けた。

 また、足立氏は新商品や期間限定商品の弱点にも注目した。それは、売上が一時的でしかない不安定さだ。マクドナルドのファンが求めているのはレギュラー品だとし、レギュラー品の大きいサイズを展開したり、すでに人気となっている品に新しいキャンペーンを加えたりした。

 さらには、「モノ」自体のアピールだけではなく「コト」が大きな売上に繋がると見抜いた。「コト」とは、「話題」や「体験」である。マックでポケモンGOができると大勢の客が集まった。商品の評価ができる用紙を配り、多くの人がSNSにそれを投稿した。トリッキーな商品やキャンペーンはネットで次々議論された。それが消費者に「楽しい」と思ってもらえるマクドナルドの姿である。

 実際に耳にしたヒット商品の裏側を、仕掛けた本人が語る書籍は説得力があり、いつの時代でも興味深い。商品開発やマーケティングに携わっていない人にも参考になる1冊だ。制作秘話というのは、仕事の勉強にもなり得るし、娯楽にもなり、人の心を掴む方法という点では日常生活にも生かすことができる。「らしさ」を武器にしたり、モノだけでなくコトで感動させたり、という視点は人付き合いにも大いに役立つ。マーケティングとは、そんなにもおもしろいものである。

文=ジョセート