Twitterで人気!「日ペンの美子ちゃん」が現在6代目って知ってた? 美文字の美子ちゃんのアグレッシブな活躍

マンガ

公開日:2019/1/24

『6代目日ペンの美子ちゃん』(服部昇大/一迅社)

「日ペンの美子ちゃん」をご存じだろうか。かつて雑誌の広告マンガでお馴染みだったという読者もいると思われるが、日本ペン習字研究会の通信講座「日ペンのボールペン習字講座」の広告キャラクターとして1972年に登場し、しばしの中断をはさみつつ複数の作家により受け継がれてきた存在だ。作家により性格や容姿は変化しているが、彼女による文字の美しさはずっと変わらない。そんな美子ちゃんに6代目が登場した現在、ついに単行本が発売されることとなった。

『6代目日ペンの美子ちゃん』(服部昇大/一迅社)はTwitter公式アカウント(@nippen_mikochan)で発表されたマンガを書籍にまとめたもの。以前の広告マンガ同様に9コマ1ページを基本構成とし、フルカラーで描かれていることも特徴だ。

 美子ちゃんを語る上で注目したいのは、歴代の作家や時代によるキャラクターの変化であろう。では現在、Twitterを主な活動の場とした6代目はどうだろうか。Twitterユーザーなら目にしたことがあるかもしれないが、個性的な企業公式アカウントが時にゆるく時に攻めの姿勢でつぶやき、人気を博している。その中でも特に注目を浴びる6代目は歴代美子ちゃんの中でも積極性と時事性に富み、ネット社会の強みを活かしているのだ。

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 歴代の美子ちゃんもそれぞれ個性的ではあったが、企業広告キャラクターである以上、今の目線で見るといささかおとなしく感じるだろう。特に過去の作品では日ペンの講座内容と特徴を説明するためにコマを割き、マンガとしてのリズムが悪くなっている面も否めなかった。しかし6代目は毎週新作が発表される上に、公式ホームページを見れば講座内容はすぐにわかる。そのおかげだろうか、作中において講座の説明は最小限に抑えられ、キャラクター性を最大限に発揮する作風となっている。

 それでも連載開始2話目までは、広告マンガらしい展開といえる。「日ペンのボールペン習字講座」で習得した腕前でとてもきれいな文字を披露し、驚く周囲に「日ペンは80年以上の歴史があって、先生も超一流揃い! 1日20分の練習で1週間も練習すればすぐに上達よ!」の決め台詞でPRをするものの、天然のドジっ子ぶりがオチになる基本パターンを踏襲。PR台詞が1コマで済まされることが旧作との大きな違いだが、まだ手堅い古風な展開である。

 ところが3話目にして突然、その基本が崩れる。星野源に憧れた美子ちゃんは、自分でも歌ってみたいと思い商店街で路上ライブを敢行。瞬く間の人だかりに喜ぶものの客は皆、美子ちゃんが書いた垂れ幕の文字に感心していたのだ。今回は例のPR台詞が登場しないが、しっかりと講座の成果を発揮することで広告になっている。このような物語で魅せる構成は、実にスマートだ。なにより、6代目美子ちゃんのポジティブさが存分に発揮されている。

 以降、6代目美子ちゃんは自ら映画の企画書を手書きし、有名映画監督たちに持ち込むものの「字はきれいだが映画は無理」と断られたり、アニメーターたちの過重労働問題を受け、手書きの「スト決行」横断幕で応援するものの、自身がアニメ化されることを知るやストを中止させアニメ制作に勤しませたりするなど、予想外の活動を見せてくれる。今後もそのアグレッシブさで、我々を魅了してくれるだろう。……もちろん彼女の最大の魅力は、字の美しさなんですけどね!

文=木谷誠