「今月のカード引落額がヤバい!」はなぜ繰り返す? つい払ってしまうお金のカラクリ

ビジネス

2019/1/24

『アリエリー教授の「行動経済学」入門 お金篇』(ダン・アリエリー、ジェフ・クライスラー:著、櫻井祐子:訳/早川書房)

 毎月、祈るような気持ちで1通の封筒を開ける。その中身は、クレジットカードの利用明細だ。そこには、自分が1カ月間、“痛みを感じずに”使ってきたお金が記録されている。動画配信サービスや、マッチングアプリ、ジムなどの定額料金。気軽に買い物ができるアマゾンやPayPayでの購入履歴。その請求金額の合計は、たいてい予想していた額よりも少し高く、筆者は「来月こそは」と倹約生活を決意する。だが、それでも数日後にはアマゾンの新しい箱が家に届いているのだ…。

 私たちは、何かの代金を支払うとき、“出費の痛み”という精神的な苦痛を味わう。その痛みは、出費について考えれば考えるほど増し、ときには私たちの浪費にブレーキをかける。

 だが、本稿で紹介する『アリエリー教授の「行動経済学」入門 お金篇』(早川書房)によれば、クレジットカードは、その便利さや手軽さと引き換えに、この“出費の痛み”を和らげるものだ。だから、私たちは、大して見てもいない動画配信サービスを解約する手間を惜しむし、深く考えずアマゾンのセール品をワンクリックで買ってしまう。自動的に引き落とされる定額料金や、一瞬で決済が完了するサービスは、私たちから“お金を使っている”という実感を奪うのだ。利益を追求する企業は、こうした消費者の性質を利用し、ストレスなくお金を落とす仕組みを追求している。

■“出費の痛み”を忘れることで、幸せにも不幸にもなる

 私たちは、この“出費の痛み”をなるべく避けようとする性質を持っている。だが、この性質は、浪費の原因になるだけではない。うまくコントロールすることができれば、幸せにつながることもあるという。

 本書で紹介されている例は、著者のひとりであるジェフが新婚旅行をしたときのこと。彼は、旅行代金の支払い方式について、食事やアクティビティなどの費用を全て含めた“前払い式”を選択した。その都度払い方式よりも高くつくが、一括して払うのでわかりやすいと思ったのだ。その結果、彼らは新婚旅行の最中、お金のことを気にせずにめいっぱい楽しむことができた。

 反対に、同じリゾートにきていた、都度払い式を選んだ夫婦は、食事やアクティビティごとに高額な(と感じる)利用料金を払わなければならなかった。そのため、お金の使い道を選ぶ際に意見が合わず、口論が絶えなかったという。度重なる“出費の痛み”がストレスとなり、せっかくの新婚旅行で仲を悪くしてしまったのだ。時と場合によっては、“出費の痛み”を避けることも大切である。

■自分の“消費のクセ”を知るきっかけになる

 本書は、誰もが陥るという消費者の性質(「すべてが相対的であることを忘れる」「自分を信頼する」「言葉と儀式の魔力に惑わされる」など)について、身近に感じる具体例とともに解説を進める。

 こうした性質は、それ自体に良し悪しがあるわけではない。自分がときとして非合理的な行動をとってしまうことを自覚し、あの手この手で消費を迫る企業に踊らされないようにすることが重要なのだ。もし、「クレジットカードのせいで破産しそうだ!」と毎月焦っているのなら、“痛み”を忘れないための工夫をすればよい。本書を読めば、自分の消費習慣に“主体性”を取り戻せるだろう。

文=中川 凌