19歳、初体験を風俗ですませた。あれから7年…風俗レポに心と身体をささげる“素人童貞”

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公開日:2019/1/27

『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』(素童/ぶんか社)

 童貞と素人童貞の違いはなんだろう。童貞が純粋無垢な存在だとするならば、素人童貞は金で性体験を“買った”罪深き存在なのかもしれない。先に性体験を済ませたのに、“何も知らない無垢な男”の方が性衝動に負けていない分、優位な生き物なのか。素人童貞は、童貞より社会カーストの下位な存在として、ひっそりと生きているように感じる。社会は“中途半端”に厳しい。

『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』(素童/ぶんか社)は、そんな素人童貞の風俗体験レポだ。著者の素童さんは、本書の冒頭で初体験の思い出を赤裸々に記している。

■私はちんぽの輸出入を行う業者になっていました。

 素童さんは19歳のとき、ついに地元の“大人の施設”に足を踏み入れた。そこで受付のおじさんに1万500円を支払い、プレイルームに通され、2人の女性からフェラをされた。そして気に入った方を選ぶ“フェラ指名”システムで、30代のオトナな女性を指名した。その後、30分しかない時間の中で素童さんはプロの技を受けたという。

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ひたすら受け身で気持ち良くなっていると、女性がローションとゴムを手に取り、私は押し倒され、いつの間にか女性の関門が目の前で開き、私はちんぽの輸出入を行う業者になっていました。

 素童さんは、2億匹の“生命の種”をゴムでしっかり包装して輸出し、なんとか一人前の“素人童貞”になれたそうだ。

 本書は、素人童貞の風俗レポだ。しかしネット上で見かけるありきたりな風俗レポとは決定的に違う点がある。素童さんは、かつて大学のゼミで哲学に関する論文を書き連ねた過去があり、文章術に長けている。圧倒的な知識もある。その実力は、風俗体験レポのサイトで謝礼をもらうほど。まさに折り紙付きだ。

 本書は、初体験を済ませた19歳から現在に至るまでの約7年分のレポを、深みのある哲学的な視点で書き連ねた、罪深き男の高尚な読み物なのだ。

■“お店からの紹介文”を計量分析した結果…

 本書は、濃密な体験レポがあまた収録されている。はじめてピンクサロンに挑戦したものの、“素っ裸になって股間におしぼりを載せて、凛々しく座って待つ姿”を“マナー”と勘違いし、嬢に爆笑された話。嬢の局部に手を“かざした”だけでイってしまった話。顔面舐めの唾液に“慈しみの涙”を感じた話。

 風俗体験記でありながら、哲学的な思想を添えることで、まるで性を様々な方向から思索する純文学のような読み応えがある。これを高尚といわず、どう表現すればいいだろう。

 また、本書の最後では、“お店からの紹介文”を計量分析した結果を解説している。簡単に説明すると、お店に所属する風俗嬢のうち誰が優良な女の子なのか、“お店からの紹介文”を読むだけで見極めるべく、フリーの解析ツールを駆使して分析・考察したのだ。

 素童さんによると、お店のランキング圏外の嬢には、その紹介文に「清楚」という言葉が入っていることが多いらしい。清楚というワードを入れるだけで人気のない嬢でも指名をもらえる確率が上がる。では、ランキング上位の嬢の紹介文にはどんな言葉が入っているのだろう。それは…本書を手に取った人のお楽しみだ。

 童貞と素人童貞の違いはなんだろう。童貞は純粋無垢な存在。非童貞は、愛を知る存在。そして素人童貞は…性行為によって人間の欲望を知った存在ではないか。薄暗い空間で誰かと体を重ね合わせ、温かみを知る。しかしそれは有限の時。愛は悲しくも破れ、また金で別の誰かと体を重ねる。この罪深き行為を重ねただけ、自分の内なる欲望を知る。そして人間という愚かな生き物の理解を深める。

 素人童貞に、社会から少しばかりの愛を捧げられることを切に願う。

文=いのうえゆきひろ