角野栄子「小さなおばけ」シリーズ40周年!「『本を読むのはめんどうだな』なんて思っても、スターになった気分で読んでもらえたら」

エンタメ

2019/1/26

 2018年、児童文学界のノーベル賞と言われる国際アンデルセン賞・作家賞を受賞した作家の角野栄子さん。世界的に注目を集める角野さんの代表作、「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」が、2019年に40周年を迎える。

 1979年の『スパゲッティがたべたいよう』(ポプラ社)からスタートした本シリーズは、世代を超えて愛されてきた幼年童話のロングセラーだ。その魅力をより広く伝える40周年企画のひとつとして、新宿STORY STORYで「『小さなおばけシリーズ』40周年&『おばけのアッチcafé』お披露目会」が開催された。

「一番正直な読者を相手に、おもしろいと思ってもらえる作品を書きたい。真剣勝負ですね」

 そう語ったのは、お披露目会当日、ブックディレクターの幅允孝さんとともに「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」40周年ブックトークに登壇した角野さん。

「保護者の方や学校の先生は、本を読んであげているから『子どもたちは本が大好きだ』という印象があるかもしれませんが、それは、子どもたちにとってはあくまで『聞き書(ききしょ)』。自分で本を読もうと思っても、向き合う対象をスマートフォンなどにスッと変えられる時代ですから、『聞き書』が『読書』になるまでの橋渡し、つまり幼年童話がおもしろくなければ、子どもたちは本から離れていくんじゃないかって」

「小さなおばけ」シリーズは、リズミカルな文章、魅力的なキャラクター、思わず引き込まれるストーリー展開に、豊富な挿絵、カタカナにも読みがなが振ってあるといった細やかな配慮が、子どもたちの“初めてのひとり読み”に最適なシリーズだ。

「自分で終わりまで物語が読めた記念日って、誰にでもあったはず。自分で読もうというときは、『めんどうだな』とか『たいくつだな』とか、ちょっと我慢しなければならないこともあるかもしれません。でも私は、最後まで自分で声を出して一冊の本を読めたという経験を、ひとりひとりが持ってほしいなと思うんです。私、書くときは、かならず声に出して読むんですよ。リズムや、読んでいる方の心の弾み具合を自分でも感じながら、何回も声に出して読みつつ書いている。だから、私の本は、声を出して読んでいただくのにはいいのではないかな。『本を読むのはめんどうだな』なんて思っても、スターになった気分で読んでもらえたら」

「小さなおばけ」シリーズの主人公、くいしんぼうのおばけ・アッチは、料理をするときに歌をうたう。たとえば、シリーズ40巻目となる最新作『おばけのアッチ スパゲッティ・ノックダウン!』(ポプラ社)では、こんな具合だ。

きょうも アッチは スパゲッティを つくっています。いつものように、うたいながら。

♪トマト まとまと
にんにく すりすり
たまねぎ ねきねき
おしお ぱらぱら
あとは にてにて できあがり
おひさまソースの できあがり

 トークゲストの幅さんも、「リフレインしていると、頭の中で勝手にキャラクターが動き出すんですよね。動画やVRみたいな派手さはないけれど、自分の中で物語が動きはじめる」と幼年童話を読むことの魅力に頷いた。

 トークセッションでは、「小さなおばけシリーズ」最新作と同時に復刊された、角野さん幻のデビュー作『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』(ポプラ社)の話も。長く入手困難な状態が続いていた作品だが、今回、角野さんの国際アンデルセン賞受賞を記念して復刻された。

「私はもともと書く人になるとは思っておらず、読むことが大好きな人でした。ところが、ブラジル渡航の経験があるので、大学の先生に『子どものことを書いてごらんなさい』とすすめられ、自信もなくおろおろと書きはじめたんです。私が『書くことはおもしろい、書くことが好きだ』と発見した、記念の本ですね。『読書』から『書き書(かきしょ)』になったという感じ」

 角野さんの言葉を受け、幅さんは「新しい場所で、新しい自分に出会い、新しいつながりを生み出していくという、『魔女の宅急便』など角野さんの他作品にも通じる原点。装丁もほぼ刊行当時のままで、作品中のサンパウロの様子も今とはずいぶん違うけれど、『ここではないどこかへ飛び出していきたい』という気持ちを描く作品として、現在の読者にも響くストーリーだと思います」と復刊を喜んだ。

『レストラン ヒバリ』特製 アッチのいもむしグラタン

 お披露目会の会場となった「おばけのアッチcafé」では、「レストラン ヒバリ」のコックさんであるアッチのレシピを再現し、ぷりぷりこんにゃくともちもちニョッキの食感が楽しい「『レストラン ヒバリ』特製 アッチのいもむしグラタン」や、シロップ漬けのフルーツに別添えのソーダを注いでいただく「アッチのピンチ・パンチ♪ フルーツポンチソーダ」など、作品に登場する料理をモチーフにしたコラボメニューを味わえる(2月28日まで)。カフェでしか買えないオリジナルグッズも、大人女子がキュンとするレトロ可愛い仕上がりだ。

アッチのピンチ・パンチ♪ フルーツポンチソーダ

 カフェのほかにも、アッチが作る料理の食品サンプルを載せたブックワゴン「おばけのアッチのほんだな」が全国を巡回、東京・丸善丸の内本店では、角野さんの生原稿や愛用の執筆道具を「角野栄子 アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ書店」として期間限定で展示するなど、40周年を盛り上げるイベントが企画されている。夏には鎌倉文学館で特別展「角野栄子の世界」が、秋には「おばけのアッチ・リーディングミュージカル」の上演が予定されているとのこと。それぞれの詳細は本シリーズの特設サイトに掲載される。本に新しく出会う子どもたちと一緒に、わたしたち大人も、角野作品に胸を躍らせるピュアな自分に出会い直すことができそうだ。

取材・文=三田ゆき

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「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」40周年特設サイト