「こんな青春送りたかった!」「キュン死する!」話題の学園コミック『1518! イチゴーイチハチ!』

マンガ

公開日:2019/1/30

『1518! イチゴーイチハチ!』(相田裕/小学館)

 知る人ぞ知る、青春ど真ん中コミック『1518! イチゴーイチハチ!』(相田裕/小学館)をご存じだろうか。今まさに中学生、高校生の方はもちろん「もう学園ものは眩しすぎる」大人にもおすすめしたい作品だ。

 思い返すと「中学や高校を楽しむ」のは意外にハードルが高かった、という方も多いのではないだろうか(現役の学生を含む)。『1518!』にはその楽しむヒントが描かれている。

やる気のなかった少女、夢を諦めた少年、生徒会へ

 本作は「キラキラしていない」学生生活を描いた作品である。「いや青春を謳歌すること自体キラキラしているでしょ!リア充でしょ!」と思うかもしれない。しかし登場人物たちは、キラキラした高校生活を送りたくても送れなかったのだ。

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 物語の舞台は、埼玉県の川越にある私立松栢学院大付属武蔵第一高校。通称松武(しょうぶ)高校だ。新入生の丸山幸(まるやまさち)は、この架空の高校の生徒会に手伝いとして入る。生徒会長の亘環(わたりたまき)が同じ中学出身という縁だ。幸は勉強はできるものの、やりたいこともないまま入学してきた。

 生徒会に烏谷公志朗(からすや こうしろう)が同じく手伝いに来るようになる。実は中学時代の幸はある野球の試合を見ていた。そこに烏谷が出場しており「キラキラしていた」と強い印象を持っていた。ただ烏谷はけがで野球から離れていた。野球に未練があった烏谷だが、再起の可能性がないことを医師に告げられ野球を諦めることになる。

 暗い話のようだがそうではない。烏谷は挫折し夢を諦めても、前向きに本気で生徒会で働く気になる。幸も烏谷も、なんとなく誘われて始めた生徒会の手伝いを徐々に好きになっていく。派手さはなくとも仲間たちと充実した毎日を送るようになる。

キュン死続出! やっぱり恋は学生生活の華!

 学生生活の華といえば恋愛だ。エースピッチャーでキラキラしていた烏谷は、高校ではくすぶっており、幸はそのギャップに面食らう。しかし彼の葛藤を知り、生徒会での働きぶりをみて少しずつ烏谷に惹かれていく。そして烏谷もまた、自分を生徒会に馴染ませてくれた幸が気になるようになる。こうして二人の距離は急速に縮まっていく。さらにキラキラしたライバル女子も登場し…このキュンキュンする結果は読んでみてほしい。

 他にも生徒会の2年生で、美人の三春と真面目男子の東の関係もやきもきする。また朴訥なラガーマン、山崎が前会長に告白していたことなども発覚。15歳から18歳のこの時しかない、環いわく「吹き荒れる恋の嵐」にも注目だ。

キラキラしていなくても行動で自分を変えた登場人物たち

「キラキラした学生生活」とは、自分がやりたい!と思ったことがそもそもあって、それに邁進することではないかと私は考える。やりたいことがなかった幸。スポーツで活躍することを諦め、やりたいことがやれなかった烏谷。彼らが成長し、いかに学生生活を楽しもうとするかが本作の見所だ。彼らは自らの行動によって輝いていく。結果として充実した時間を手に入れる。

 松武高校は「色々な意味で意識が高い」学生しかいない、ある意味ユートピアだ。他人のやる気を鼻で笑うような人間もいない。勉強やスポーツだけではなく、日々の学校生活で盛り上がろうとする気概がある。

 こんな学校に行けていたら人生変わったよなあ、なんて考えたけれど、やっぱり変わろうとして行動するべきだった、とも今更ながらに思った。もちろん現役の学生さんは諦めずに、今を楽しみつくしてほしい。行動は自分と貴重な時間を変えられる! 松武生徒会の地味に充実した青春から学んでみてほしい。

文=古林恭