グーグルとスタンフォードが認めた男、市場規模100兆円の全米の水道管救済に挑む

ビジネス

2019/1/31

『クレイジーで行こう! グーグルとスタンフォードが認めた男、「水道管」に挑む』(加藤崇/日経BP社)

 ロボットベンチャーをグーグルに売り、世界の注目を集めた男がいる。彼が現在取り組んでいるのは「水道管」。インフラ保全は老朽化が深刻でありなおかつ急務だ。その市場規模は100兆円である。

『クレイジーで行こう! グーグルとスタンフォードが認めた男、「水道管」に挑む』(日経BP社)の著者・加藤崇氏は1978年生まれの早稲田大学卒。共同創業したヒト型ロボットベンチャーを2013年に米国Google本社に売却。2015年には、人工知能により水道配管の更新投資を最適化するソフトウェア開発会社を米国で創業し、CEOに就任した。

 彼は熱い志を持って単身渡米した。彼が掲げていた明確なビジョンは“Make Japanese Visible in the US”(アメリカに日本の旗を立てること)。日本の製品やサービスを世界に売るとき、とりわけハイテク製品で成功するにはアメリカで売れなければ話にならないという。それを実現している日本企業は少ない。アメリカで流行っているものを小さくして流行させるのではなく、日本の製品で世界を驚かすことを狙う。

 彼は、アメリカのソフトウェア開発者マーク・アンドリーセン氏の以下の言葉を引用している。

起業するってことは、君たちがこれまで経験したことがないような人生のジェットコースターに乗るようなものだ。ある日、自分には世界を征服できるんじゃないかと思うこともあれば、その数週間後には、自分の事業は破滅するんじゃないかと感じることもある。

 アメリカでうまくいったモデルを日本で真似して展開するだけなら、このジェットコースターに乗る必要はない。そのかわり、自分が世界にインパクトを与えるチャンスを放棄することになるだろう。本当に世界で勝負するには、経営者はそのジェットコースターに乗らざるを得ないと著者は言う。

 本書は2016年4月から2018年6月までの彼の戦いが時系列で記されている。それは実際に日記のような形でリアルタイムに書かれたものをまとめたものだ。執筆するにあたり、著者が決めたことがひとつあった。それは「スタートアップ経営についての嘘偽りのない真実の姿」を書きたい、ということだ。良い側面や華やかな側面だけを書くのではなく、格好悪かったり、苦労したり悩んだりしたことをありのまま書くようにした。世の中の、成功した経営者が自分の選択を美化して書くようなやり方を彼は避けたかった。「この時点で自分はこう考えていた」「こういう展望を持っていた」というリアル見せることで、文に説得力を生み出した。

 著者は最後にこう語る。

そう、僕は未来を予測する天才などではなく、現実を懸命に生きた凡人なのだ。これは大いなる凡人の物語だ。凡人であっても、仲間に恵まれ、志を失わなければ、社会にインパクトのあることを成し遂げることができる。そのやり方に関してだけは、きっとこの本から学べるはずだ。

 リアルを学び吸収すること、それは人の血となり肉となる。夢見て心を動かして、現実で体にエナジーを入れ動かす。本書は、独立や起業を目指すチャレンジ精神に溢れた社会人の背中を大きく押す1冊となり得るだろう。

文=ジョセート