結成11年目を迎えるももクロ。ライブを核とした“破天荒”なビジネス戦略とは?

エンタメ

2019/2/1

『ももクロ非常識ビジネス学 アイドル界の常識を覆した47の哲学』(小島和宏/ワニブックス)

 2019年5月17日に、結成から11周年目を迎えるアイドルグループ・ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)。百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの4人によるライブを核とした“破天荒”な活動は今なお、老若男女の多くのファンを虜にしている。

 彼女たちの活躍は、2010年代前後に端を発した“アイドル戦国時代”の基盤にあったという声は少なくない。グループの歴史をたどると象徴的なできごとは枚挙にいとまがないほどであるが、そもそものアイドルグループの寿命を考えると、10年以上にわたり黎明期を支えたメンバーが在籍し続けるグループというのも稀有な存在である。

 では、ももクロがなぜ今もなお愛され続けるのだろうか。ビジネス的な視点からももクロの活動を振り返った書籍『ももクロ非常識ビジネス学 アイドル界の常識を覆した47の哲学』(小島和宏/ワニブックス)は、その背景に迫る一冊である。

◎CDの売上げと反比例するライブの動員数

 ももクロは“ライブが魅力”というのは、ファンの間でも広く語り継がれていることである。万単位の集客を誇る会場での大がかりな演出や、生バンド“ダウンタウンももクロバンド”をバックにしたパフォーマンスなどが取り上げられる機会も少なくないが、会場の大小を問わず、彼女たちとファンがふれ合える空間を彩る楽曲も欠かせないものである。

 しかし、本書によれば業界関係者の中では「ももクロはCDの売り上げが10万枚にも満たないのに、どうしてライブではそれ以上の数を動員できるのか?」と疑問の声が上がっているという。実際、2018年5月の『10th Anniversaryコンサート The Diamond Four -in桃響導夢-』では、2日間にわたり東京ドームで8万2907人を動員しており、音源よりもライブという名の“現場”を重視するファンが多いようにも映る。

 これに対して、ももクロの公式ライターである著者が導き出したのは「ライブを最大の『商材』として売ってきた」という答えだ。2011年頃から、ももクロは年間の大まかなスケジュールを固定している。春には「春の一大事」、夏には「夏のバカ騒ぎ(「桃神祭」「MomocloMania」の場合も)」、冬には「ももいろクリスマス」を開催するというのを軸にしながら、活動を続けている。

 時期により47都道府県ツアー「ジャパンツアー『青春』」を挟むなど変動はあるものの、基本的にこれら3大ライブは一貫して継続している。各ライブの空気感も異なり、「夏のバカ騒ぎ」では水着エリアを設けるなど季節にちなむ趣向を凝らし、「ももいろクリスマス」ではじっくりと楽曲に耳を傾けられるようにしたりと、多彩なニーズに対応できるライブ作りに取り組んでいる。

 こうした季節ごとの恒例のライブがブランディングにつながり、結果として「1枚1000円のCDは買わずに、1枚9000円を超えるコンサートチケットには惜しみなくお金を遣う」というファンのサイクルを生み出したのである。

◎赤字にならなければよいという免罪符

 ももクロがライブを核とした成功を得た背景には、彼女たちの活動自体に「儲からなくても赤字にならなければいい」という免罪符が与えられていたことも大きく関係していた。

 今でこそアイドル界の一大勢力となった、彼女たちの所属事務所スターダスト・プロモーションであるが、事務所で初のアイドルグループとして結成したももクロは当初「稼ぎ頭」としての活躍を期待されていなかった。しかし、だからこそ「さまざまな演出にお金をかけ、それが顧客満足度を極限まで引き上げる要因になっている」と著者は分析する。

 手弁当での演出も象徴となるが、例えば、先述した「ジャパンツアー『青春』」では、メンバーみずからが開催地に前乗りして、名物を食べ歩いたり名所を巡ったりする映像を幕間で放映している。ただ、ツアー直前に考案されたものだったため、当初の予算には前乗りに伴う滞在費や撮影費用は計上されていなかったという。

 では、どのように赤字分を補填したのか。ももクロのマネージャー・川上アキラ氏が採ったのは「前乗りして動画を撮影している合間にスナップショットを撮り、その写真を『非公式生写真』と称して、1枚200円で販売する」という施策だった。ライブ当日にはみずから現場へ立ち、手売りする。そうすることで人件費がかからないというメリットもあるが、このような「したたかさと柔軟さが、ももクロを支えている」と本書は解説している。

◎アイドルとしてではなく彼女たち自身を見守るファン層

 ライブを核としたビジネス的な側面がある一方で、ももクロの魅力に言及するならばやはり、少しばかり精神的な側面にもふれておきたい。

 アイドルの人気は、一過性のものであるという見方もある。著者の言葉を借りるならば、一部のファンが求めるのは「育成ゲーム」的な要素であるためで、人気に火が付くまでの成長を見守りたいファン層が一定数いるからだ。そのため、おおよそ万単位での集客を達成した時点で、ファンが次に売れそうなグループを追いかけ始めるというケースも少なくない。

 しかし、ももクロは「長く見つづけてくれるファン層が異様なまでに多い」と著者は解説する。その一例として取り上げたいのが2017年10月に日本武道館で行われたファンクラブ限定ライブ「over.40祭り」である。

 年齢が40歳以上のファンで埋め尽くされた会場では「年齢の高い順」に良席が割り当てられるという試みが行われ、著者によるとアリーナ席へ入れたのは「少なくとも50歳以上」で、最前列を手にしたファンは88歳のおばあちゃんだったという。

 また、ももクロ界隈でもう一つ聞かれるのが「ももクロではじめてアイドルのコンサートに足を運ぶようになった」という声である。もちろん生粋のアイドルファンとしてももクロにたどり着いたファンもいるだろうが、彼女たちが「人生で初めてハマったアイドル」とする意見も珍しくない。

 こうしたファン層を獲得できた背景には、目標を掲げて有言実行してきたというももクロのストーリー性も大きく関係している。

 昨年1月、有安杏果の卒業により“奇跡の5人”が見られなくなることから、グループの行く末が案じられる時期もあった。しかし今なお、ももクロは活動の幅を拡げ続けている。激しく流動するアイドル界において、これからもさまざまな“伝説”を築き上げていくことだろう。

文=カネコシュウヘイ