生放送中の投稿コメントでネット番組はあらぬ方向に… お仕事、妖怪、時々グルメ! ADが奮闘する連作ミステリー『コレって、あやかしですよね?』

文芸・カルチャー

2019/2/8

『コレって、あやかしですよね? ~放送中止の怪事件~』(斎藤千輪/光文社)

 妖怪、幽霊、UMA――人にあらざるモノならなんでも来いのオカルト系検証番組、それが「あやかしTV」。とはいえ、インターネットの生放送番組なので、予算は少ない。それでも負けずにおもしろい番組を作ってやろうと日々奮闘するアシスタント・ディレクターの香月都が、本書『コレって、あやかしですよね? ~放送中止の怪事件~』(斎藤千輪/光文社)の主人公だ。

 新米の域はすでに脱しているけれど、盤石の自信があるわけではなく……という程のお年頃。現場での細々とした手配や作業はもちろん、時には巫女姿で番組に出なきゃいけないこともある。器用じゃないからたまにヘマもするけれど、何事にも一生懸命で、なによりも心延えが素直なのが一番の長所だ。そんな彼女に次から次へと難題を持ち込んでくるのは、なんと番組の視聴者たちだった。

 始まったばかりの番組なので、最大の課題は視聴者の獲得。そこで、ネットのインタラクティブ性をいかしたアクティブな番組作りを目指しており、ユーザーからのコメントをとても重視している。

 そんな事情があるせいで、伝説の生物・龍をテーマにした初回放送からいきなりハプニングが起こってしまう。「不思議太郎」なるユーチューバーが書き込んできた(龍は実在する。今朝、多摩川で撮影した。)というコメントが、番組の段取りをぶっ飛ばしてしまったのだ。

 動画に映っていたのは2本の角のようなものが生えた、巨大生物らしき影。果たしてこれは本物か、それともフェイクか。レギュラー・コメンテーターを務める博識の漫画家・妖海太が強い興味を示したこともあり、都は敏腕ディレクターの倉橋匠らとともに事の真相を探り始めるのだが……。

 お仕事×妖怪×時々グルメという人気の要素を一冊に詰めこみ、ミステリーの風味を効かせた本作の中で、何よりおもしろいのは番組作りの現場で繰り広げられる人間模様だ。

 著者が元々テレビ畑の人というだけあって、「番組ってこんな風に作られているのか」と感心しきりのシーンが続く。たとえば、視聴者から得た化け猫情報がイケそうだとなると、プロデューサーの一存で番組内容が瞬時に変更される場面。放送を3日後に控えた無茶ぶりに、スタッフ一同さすがに唖然とするも、臨機応変な対処を迫られてしまう。また、番組を自分のために利用しようとする視聴者との攻防や、取材相手への気遣いなどなど、都の気苦労は耐えることがない。

 だが、それでも都は精一杯がんばる。人の想いを伝えられる演出家になるという夢があり、個性的ながらも気のいい仲間たちがいるから、がんばれるのだ。そして、二転三転する事件の真相に触れた時、「見えないからって、そこに何もないとは限らない」と、新しい価値観に目覚めていくのである。

 時に痛快、時にホロリとなるこの小説、読むと元気になること間違いない。ただし、話の合間にスタジオ弁当など、なんとも美味しそうな食べ物がちょいちょい登場するので、腹ペコの時だけは気をつけた方がいいかも⁉

文=門賀美央子