「へば東京でけっぱるじゃ!」津軽弁ってすごい!『方言って素晴らしいっていう漫画』

マンガ

更新日:2019/2/4

『方言って素晴らしいっていう漫画』(にーづま。/一迅社)

 みなさんは、子供の頃に憧れていたもの、覚えていますか?

 筆者は小学生の頃、方言に対して強烈な憧れを持っていました。テレビで見る方言、特に大阪弁が、小学生の筆者には非常にクールに映ったのでした。

「なぜ自分は大阪出身ではないのか」。幾度となく悔やんだものです。どうしても大阪弁を使いたい気持ちが抑えきれず、友達とのおしゃべりで得意げにエセ関西弁を使っていたこともあります。行ったこともない関西の言葉を使うなんて今振り返ると、まぁまぁ、いや、かなり痛いことだとわかるのですが、同じようなことをしていた人、結構いるはずです。

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 さすがに大人になった今ではそんな痛いことはしませんが、いまだに方言に対する憧れはあります。すると、そんな筆者にぴったりの漫画があるというではありませんか。にーづま。先生の『方言って素晴らしいっていう漫画』(一迅社)です。

 その名の通り、方言って素晴らしいという気持ちにさせてくれるこの作品。方言に憧れのある人にとっては、ワクワクしかありません。

【あらすじ】
主人公の福原夢子(福岡県出身)は、上京して憧れの東京の大学ライフを送ることに。目標は東京で素敵な彼氏を見つけること。そこで出会ったのが、“エグいイケメン”の青森蒼くん。勇気を出して話しかける夢子。すると彼の口から飛び出したのは、聞き取れないほど早口の津軽弁。その日から、青山君、もとい『津軽くん』との、楽しい方言ライフが始まるのです。

 元々はTwitterで公開していた漫画で、人気が高まり書籍化に至ったそうです。納得です。そもそも津軽弁とは、青森県津軽地方で話される方言のこと。地域によってかなり差があるようですが、一般的に、難解な方言として知られています。その理由を、作中で津軽くんが説明してくれています。

<津軽弁の特徴>
1、言葉を短くして話す
2、アクセント位置が違う
3、発音の区別をあまりしない
4、早口

 文字に起こすと、こんな感じです。

「東京だっきゃ人たんだよげで…なんだか まんだ おっかねして あまし なじまいねしてさ」(夢子と初めて会ったときの、津軽くんのセリフ)

 このシーンに関しては標準語翻訳がないため、憶測ではありますが、恐らく、「東京に来てまだ慣れない」ということを言ってるのではないかと思います。

 津軽くんのマシンガントークに最初はたじろぐ夢子でしたが、話すうちに、津軽くんがいかに地元を愛しているかを知るようになります。
なにより、エグいほどイケメンなのに、信じられないほど素朴な性格の津軽くん。とにかく天然でピュア! そんなギャップを見せられたら、夢子じゃなくてもノックアウトです。

■津軽弁は、外国の言葉に聞こえる!?

 ある日、夢子とデートをすることになった津軽くん。なぜか5時起きと、むちゃくちゃ早起きです。ところが津軽くん、待ち合わせの渋谷駅で迷子になってしまいます。そこで駅員さんに道を尋ねるのですが、案の定、聞き取ってもらえず…。最終的には、外国人と間違えられ「Go straight」と返されます。実際にこんなことってあるんでしょうか? ちなみに、津軽くん、標準語よりも、フランス語のほうが得意という設定です。フランス語専攻だからというのが理由ですが、津軽弁とフランス語は似ているので、ひょっとしたら上達も早いのかも……?

 津軽弁の独特の表現についても、津軽くんが説明してくれます。

け→ちょうだい
め→美味しい
わぁ→私、俺
な→あなた

 ほかにも「けやぐ→友達」「苦されで→心配されて」「じゃいご→故郷(田舎)」など、難解な単語が頻出します。ですが、これらには標準語翻訳がついているので安心して読めます。

■大阪弁キャラも登場!

 さて、この作品では津軽くんの津軽弁にスポットが当たっていますが、主人公の夢子も博多弁の使い手です。ときおり、お国言葉が出ます。

 そして、もう一人、大阪府出身の坂口大輝も登場します。夢子の友人・東 京子(東京出身)の恋人です。小気味良い大阪弁で、津軽くんと夢子の仲をいい感じに茶化してくれるので和みます。

 続刊はなく、この一冊で完結してはいるのですが、巻末のコメントで、「続きがかけたらな〜と思っております」と、にーづま。先生がおっしゃってますので、続きが読めるのが今から楽しみですね。

 この漫画を読むと、改めて気付かされるのです。ああ、言葉って美しい。方言って素晴らしいなと。方言に惹かれるのはきっと、その人のルーツを感じられるからなのでしょうね。魅惑の方言ワールドに、あなたも誘われてみてはどうですか?

文=島野美穂(清談社)