孤独の恐怖は想定以上! 早死にリスク50%増、アルツハイマーリスクは2倍に

社会

公開日:2019/2/6

『世界一孤独な日本のオジサン』(岡本純子/KADOKAWA)

 昨年1月、イギリス政府が「孤独担当相」を創設し、人々を「孤独」から守るためのコミュニティ活動支援などの政策を実施すると発表したことが、日本でも報じられた。

 このとき日本ではあまり大きな話題とはならなかったが、じつは「ボッチ問題」は、世界では政府レベルで改善に取り組むべき一大事なのである。そのコトの重大さを伝えてくれるのが、『世界一孤独な日本のオジサン』(岡本純子/KADOKAWA)だ。

 コミュニケーションの研究家である著者によれば、イギリスより事態が深刻で「世界一孤独な国民」は日本人であり、中でもいちばん危険なゾーンにいるのが、中高年男性=オジサンたちだという。

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 本書は、なぜ日本人が、特にオジサンが孤独になるのか、孤独はいかに体と心をむしばむのか、コミュニケーションと孤独の関係性などを、さまざまなデータを引用しながら解説するとともに、どのようにしたら孤独という「魔窟」に入らずに済むのかなどの実践的な対処法を紹介している。

■孤独は万病のもと。死に至る病でもある!?

 ではまず、孤独がなぜ世界で問題視されているのか、そのリスクからお伝えしよう。

 本書にはさまざまな国の調査機関のデータが掲載されているが、孤独であることによるリスクは、1日たばこ15本を吸うことや、アルコール依存症であることに匹敵し、早死にするリスクがそうでない人に比べ50%も高く、アルツハイマーになるリスクが2.1倍にもなるという。

 他にも孤独が心身の健康にもたらす悪影響は甚大で、孤独は万病のもとであり、死に至る病でもあることが明かされている。

■なぜ日本人は孤独に陥りがちなのか

 このようにハイリスクな孤独に、なぜ日本人はなりがちなのか。その大きな要因は「コミュニティ」と「コミュニケーション力」の不足であると著者は指摘する。

 前者においては、近年では、都市化や核家族化などにより、「地縁」「血縁」という昔からのセーフティーネットとしてのコミュニティ、例えば、地域を挙げて祭りや行事に参加する(地縁)、親類関係の集まりに参加する(血縁)といった機会が失われつつあり、その一方で、「それに代わるサードプレイスとしてのコミュニティが欠落しているのが、日本社会の大きな問題だ」と著者は指摘する。

 つまり、会社、学校や家族・親類以外での人間関係の構築が、日本では諸外国に比べて図りづらい構造になっているのだという。

 また後者の「コミュニケーション力の不足」に関しては、日本人は文化的同質性が担保されているという島国気質や誇り高きオヤジ気質が災いして、多くを言葉にしない文化や孤独を美化しがちな文化を醸造してきた歴史的経緯や、教育問題(読み書きは教わるが話し方は指導がないこと)、スキンシップ最貧国であることなど、いろんな日本全体の問題点が指摘されている。

 また、核家族化や都市化による親子間コミュニケーションの希薄化の結果、内閣府調査データなどからは「日本人は親不孝度世界1位」であるという、ショッキングかつ不名誉な指摘も本書にある。

■「残念なオジサン」にならないために

 こうしたコミュ力不足な日本人の中でも、その底辺にいると考えられるのがオジサンたちなのである。

 本書に掲載された国際機関OECD(経済協力開発機構)の調査(2005年)によれば、「友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごすことのない人」の割合は、日本の男性が16.7%と加盟21カ国の男性中、最も高かったという。

 その背景として著者が指摘するのが、日本の特殊な労働文化だ。

 仕事一筋で働く中、友人や趣味などを作る暇もなく、仕事関係以外のコミュ力を伸ばす機会を得られないまま、気がつくと退職の日を迎えるという人は少なくないという。

 それまで所属していた会社という唯一のコミュニティの肩書が外れた男性の多くは、内向化して家に引きこもり、「終活」と称したりして孤独を選びがちになる。それだけならまだしも、内向的になることで他者を敵とみなすようになり、威張るオヤジ、キレるオヤジといったある種の老害にもつながることも、著者は問題視する。

 そうならないように、日頃から人との触れ合いの場に参加する「集活」を行うべきだし、コミュ力は正しく学ぶことで、いくらでも育てられる力であることを認識するべきだと著者は指摘する。

■孤独にならないための努力が個人単位で必要

 本書には他にも、孤独対策先進国のイギリス、アメリカ におけるコミュニティの取り組みなどが現地取材レポートで紹介されている。日本が 孤独対策後進国であることが明確になる本書だが、つまり、日本においては国に頼らず、自ら孤独対策を講じていく必要があることを痛感する。

 もしあなたが、「家族を含め、心から信頼できて頼れる人たちと、深く、意味のあるつながりや関係性を築いている」のであれば、孤独な人ではない。

 しかし、もしそうした対人関係が一切ないとしたら、オジサンか否かにかかわらず、ぜひ、我がこととして真剣に本書を読んでみて欲しい。

文=町田光