家賃は「月収の3分の1」は昔の話! 決して他人事ではない家賃滞納者の実態

社会

2019/2/12

『家賃滞納という貧困』(太田垣章子/ポプラ社)

 生きるためにはどうしてこんなにもお金がかかるのだろう。通帳記入をするたびに、その支出の多さに我ながら驚く。と、同時に、思うような収入が得られなくなった時、今の生活はどうなってしまうのだろうかとゾッとする。電気・ガス・水道の支払いにも困るだろうが、一番問題となるのは、毎月の最大支出・家賃。一度でも滞らせたら、その肩に大きな借金がのしかかるし、住む場所がなくなるのは死活問題だ。

「『家賃滞納』は『貧困』の入り口であり、そのシグナルでもある」。そう語るのは、2200件以上の家賃物件のトラブルにかかわった経験を持つ司法書士・太田垣章子氏だ。太田垣氏の著書『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)では、彼女がかかわった家賃滞納者の姿を18の事例として紹介。その実態を明らかにしながら、人が家賃滞納に陥るつまずきのポイントを教えてくれる。

 よく世の中では、「家賃は月収の3分の1程度が理想」ということが言われる。だが、それはもう過去の話。太田垣氏に言わせれば、今の世の中、家賃を月給の4分の1以下にまで抑えなければ、大きなリスクを負いかねないという。必要不可欠なスマホ代、コンビニでの惣菜代、夏のエアコンの電気代など、昔に比べて、私たちの生活は、確実にお金がかかるスタイルに変化している。その状態で月収3分の1の家賃を支払うとなれば、生活はカツカツになって当然。蓄えがなければ、何かの拍子で家賃が支払えない月が出てきてもおかしくはない。

 この本を読んでいると、家賃滞納にはあらゆるケースが存在していることがわかる。大手企業に勤務しているのに、仕事での失敗から酒に溺れ、家賃が支払えなくなってしまった33歳の一級建築士。甲子園を目指す息子の部活費用を「贅沢費」とみなされかねないと、生活保護申請をできないでいる42歳シングルマザー。部屋を借りた直後から家賃滞納をし続ける、21歳の家出女子。行方不明になってしまった83歳の女性…。特に、貧困にあえぐシングルマザーの暮らしが心に残る。

 2018年の厚生労働省の調査によると、離婚後親権を得た親のうち、養育費をきちんと受け取っている人はたった26%。逆に一度も受け取ったことがないという人がなんと53%もいるという。子育てのため、不安定な非正規雇用につかざるを得ず、懸命に働いても、家計は火の車。そんな状況の中で家賃の支払いができなくなってしまうケースは後を絶たない。せめて、養育費があれば、状況は変わると思うのだが…。離婚しても子どもは父母2人の子ども。養育費を支払う側もその意識をしっかりともってほしいと強く願うばかりだ。

 家賃滞納にはあらゆるケースがある。自分がふとした拍子に家賃を支払えない状態になる可能性はないとは言い切れないし、両親や兄弟、親戚がそのような状況に陥る場合だってありえないことではない。そのようにならないためにどうすれば良いか。もし、そうなってしまった時にどうしたら良いか。この本は転ばぬ先の杖。実態を知ることで、きっと防げる未来がありそうだ。

文=アサトーミナミ