今話題となっている性の多様性「何も知らない」「もっと詳しく知りたい」にLGBTの入門書

社会

2019/2/12

『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』(石田 仁/ナツメ社)

 新聞やテレビ、雑誌などさまざまな媒体で話題に上るLGBT。「最近、よく聞くけど正直よくわからない」「少しは知っているけれども詳しくは知らない」という人は少なくないはず。

 近年、テレビや雑誌などで見る、オネエ口調で女装をする男性や性転換手術をしたタレントなどを思い浮かべる人がいるかもしれない。間違ってはいないが、彼らがLGBTの全てではなく、もっと広義の意味を成す。

 LGBTとは「レズビアン(女性の同性愛者)」と「ゲイ(男性の同性愛者)」、「バイセクシュアル(両性愛者)」、「トランスジェンダー(性別超越者)」の頭文字を取った言葉。いわゆる“性的マイノリティ”のうちの一部を指す。

 趣味だけでなく、価値観までもが多様化する現代社会において、性は重要なキーワードのひとつ。そんなLGBTについて学ぶ初めの一歩として『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』(石田 仁/ナツメ社)をおススメしたい。

 本書はLGBTの基礎知識はもちろん、彼らを取り巻く環境や社会的な動きなど、なかなかうかがい知ることができない一面を垣間見ることができる。本稿では、その一部を紹介したい。

■「男」と「女」だけではない、性の奥深さ

 性別は男と女。この2つしかないと考えるのが一般的だ。だが、性について考える際、もっと広い目線で考える必要がある。

 生まれたときに医師から宣告される性別(割り当てられた性別)と性別に関する自己意識(性自認)、魅力を感じる性別の方向性(性的指向)の3つで考えると、性とは実に多様だ。つまり身体は男性、心は女性、恋愛対象は女性ならば、これもひとつの性として考えられるということ。

 男女どちらにも性的魅力を感じるバイセクシュアルや、男女どちらにも魅力を感じないアセクシュアルなども加えれば、さらに複雑さは増す。まずは、男と女という二元論で考えるのではなく、グラデーションで性を理解することが必要となりそうだ。

■同性同士の部屋探しは困難!?

 愛する者同士であれば、常に一緒にいたいと思うもの。そうすれば、自然と同棲を考える、なんてカップルもいるだろう。

 しかし、ここで同性同士のカップルに試練が訪れてしまう。男女のカップルであれば同居可の物件はたくさんありそうなもの。だが同性カップル、特に男性同士はかなり難しいという。

 理由は「男性同士は部屋を汚しやすいこと」と「片方が家賃を滞納しやすいこと」の2つ。しかし、上記2つの理由は敷金制度と保証制度で十分に対応可能だ。つまり、正当な理由かどうかは怪しいということ。住環境においても彼らは不遇な対応を受けているのだ。

■男性同士の恋愛を描くBL(ボーイズ・ラブ)

 今では普通に使われるようになった腐女子(ふじょし)という言葉。男性同士の恋愛を題材にするBL(ボーイズ・ラブ)を好む女性を指す際に使われており、腐女子という言葉が誕生するほど、BLは創作活動の一大ジャンルとなっている。

 BL好きの女性は、なぜBLを好むのだろうか。本書によれば、それは大きく3つの理由が考えられるという。

(1)逃避説…女性にとって、性は不安や恐怖を伴って認識される。BLはこの恐怖の逃避として好まれている。

(2)ミソジニー説…女性がミソジニー(女性嫌悪)を抱くと女性でない存在に自己同一化しようとする。それがBL表現を好む理由に。

(3)復讐説…男性を女性的な存在に貶めて復讐をする。

 以上3つが理由ではないかと考察している。

 だが、本書では「なぜBLが好きなのか?」と問うことに一石を投じている。「なぜ」と問うことで、その対象が特殊であるというネガティブな解釈を誘発してしまうという。つまり、「なぜBLが好きなの?」「なぜ同性愛者なの?」と問えば、暗に「あなたは特殊である」というメッセージを投げかけてしまうことになるということだ。現在のBL研究では「なぜ」ではなく、「どのように」という問いによって研究内容が豊かになってきたとも語られている。

 性について悩みを抱える人は身近にいるかもしれない。それは家族であったり、友人であったり、職場の同僚の可能性だってある。もし、悩みを知ったときにアナタはどのような行動を取るだろう。これからもその人と大切な家族・友人・仲間として過ごしたいと思ったとき、アナタに何ができるだろう。そのためにも、まずは性について知り、考えてみることが良いスタートとなるはずだ。

文=冴島友貴