「水曜どうでしょう」のスタッフ飲み会に参加したような1冊

イーストプレス

2012/4/13

腹を割って話した

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:藤村忠寿 価格:1,000円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「水曜どうでしょう」は、96年10月から北海道内で放映され始めた人気バラエティ番組。一定の約束事に沿ったロードムービーのような形体で、道内で絶大な支持を得た後、日本全国でも認識されるようになりました。

出演者の大泉洋さんは、その後ドラマに映画にと引っ張りだこの大ブレイク。『千と千尋~』の蛙の番台も彼の声だとか! 私もスペインでTVコーディネートをしている関係で、日本で流行っている番組やタレントさんなどよく耳にしていますが、遠いスペインでも彼の番組の存在は知っていたほどです。

TV番組制作は、本当に千差万別です。入念に何ヶ月もかけて準備をするものもあれば、ほぼ現地入りしたスタッフの技量と裁量で、仕込みをせずに進めるものも。「水曜どうでしょう」を初めて見たときは、後者のタイプかと思っていました。

こういう番組は、見ているほうも「いきあたりばったり」的な感覚を楽しめ、臨場感にもあふれます。絵画でいうなら、抽象画。絵筆を自由に動かして、好きなときに辞めて、好きなときに描き始める。そして、そういうタイプの撮影は、コーディネーターにとっても、監督やカメラさんにとっても、最も己の「技量」を問われる、即興でどこまで機転が利くかの真剣勝負で、実は仕込む番組よりずっと難しい…。

ことに海外ロケとなると日本の常識も感覚も通用しないことが多く(だから面白いのかもしれません)、一歩間違えばそれこそ生死に関わってしまう、そんなことをさらり、のらり、くらりと時々猛烈な主張をしながら進めて行く、この番組のそこはかとないすごさには常々感心していました。で、この1冊を購入。

スタッフはどんな方々なのか純粋な興味から手に取りましたが、うーん! やはりこうか! という印象。スタッフそのものがあの番組である、というようにしか表現できません。ディレクターの藤村氏と嬉野氏のまさに「腹を割って話した」会話は示唆に富むような、あいまいな中に、一本「モノつくり」の軸が通っているような、なかなかに滋味深い、噛めば噛むほど味が出るスルメのような内容。嬉野氏は最後に「出会い」について言及していますが、まさに彼らスタッフの各味が出会い混ざり合ったのが番組として昇華している、という印象です。電子書籍で1000円は、正直高い! ですが、あの番組のブレイクの理由を垣間見たい人にはおすすめです。


腹を割って話すべくスタッフは温泉へ向かう。ゆえにトークも飲み会調で続き

取り留めのない話題の中に、彼ら独特な哲学が垣間見えます (C)藤村忠寿・嬉野雅道/イースト・プレス