男ふたりで観覧車に乗っているワケを見破れるか!? 斬新な形の密室ミステリー

文芸・カルチャー

2019/2/13

『早朝始発の殺風景』(青崎有吾/集英社)

 新年早々、一風変わったミステリー小説が発売された。青崎有吾氏の『早朝始発の殺風景』(集英社)だ。おおざっぱに説明すれば、本作はいわゆる“日常の謎”を解き明かす高校生たちの青春ミステリーなのだが、そのシチュエーションが抜群におもしろい。

 収録されている5つの短編は、どれもが“場面転換なし”かつ“リアルタイム進行”で展開していく。そして、会話中にふと“違和感”に気づいた高校生たちが、その場にある限られたヒントだけで推理を行い、最後にはその結末を受け入れる…。物語の舞台となるのは、早朝の始発電車や放課後のファミレス、あるいは観覧車のゴンドラの中などなのだが、それぞれが青春の香りがする「密室」となっている。

■人気の少ない始発電車、男ふたりで乗る観覧車…一風変わった「密室」ミステリー

 表題作「早朝始発の殺風景」は、収録作の中でもひときわ凝った構成だ。ある朝、加藤木が始発電車に乗ると、クラスメイトの殺風景(さっぷうけい、という苗字の女の子)がいた。こんなに早く登校したところで、校門が開いているはずもない。そこから、どうして彼女がこんな時間に電車に…? と推理していくのだが、不自然に始発電車に乗っているのは加藤木も同じ。互いに事情を抱えるふたりは、細かな言動から相手の目的を探り合う。つまり、ふたりともが“探偵役”なのだ。

 また、「夢の国には観覧車がない」は、遊園地の観覧車でゴンドラが1周する間に物語や推理がすべて完結する。高校の部活の引退記念で遊園地を訪れた寺脇は、後輩・伊島とともに、男ふたりで観覧車に揺られていた。どうせなら思いを寄せる葛城と乗りたかった…そう落ち込む寺脇に対して、伊島は突然核心を突いてくる。「寺脇先輩って」「葛城のこと好きなんですか」――。考えてみれば、この日の伊島の行動はどこか不自然で…。観覧車というアイテムを最大限に利用した結末は、読者の心を締め付けるだろう。

 いかに日常的な謎といっても、推理による解決は非日常的な行為である。“平成のエラリー・クイーン”と呼ばれる青崎氏の精緻なロジックと、登場する高校生たちが抱える青春時代にありふれた悩みは、ある意味でアンバランスだ。しかし、だからこそ、複雑な推理の果てに明らかになる彼らの感情の機微が、こんなにもいじらしく、愛おしく思えるのかもしれない。

文=中川 凌