天皇退位の前に知っておきたい基礎知識! 『マンガでわかる 天皇』で公務から重要トピックまで

社会

公開日:2019/3/4

『マンガでわかる 天皇』(武光 誠:監修、柾 朱鷺・MICHE Company:マンガ/池田書店)

 近頃なにかと「平成最後」と謳い文句がついたり、「新年号がどうなるのか」「即位儀礼をどう執り行うのか」などと話題になったり、2019年に入っていよいよ新天皇の即位の日が近づいてきたことを実感する。と同時に、実はきちんと説明できない「日本人にとって天皇とは何か?」。そこでおすすめしたいのが、『マンガでわかる 天皇』だ。本書は、複雑な天皇の歴史の流れを追い、重要トピックを徹底解説。天皇制のいろいろや歴代天皇の事績をマンガとコラムで紹介してくれる。

「そうは言っても、マンガでしょ?」と侮ることなかれ。マンガでわかりやすく流れを掴む一方で、「大和政権はどこで誕生したのか」「天皇の権威を利用した戦国大名」など気になるトピックはコラムで補足、さらに125代にわたる歴代天皇を一人一人紹介するという丁寧さで読み応えはかなりあり(現在は除外されてしまった南北朝時代の北朝の歴代天皇も含む)。

 一般に古代史では歴代天皇を中心に歴史を捉える向きがあるが、中世や近世には知られていない天皇も多く、こうしてそれぞれの略歴を見ていくことで、歴史を別の角度から見るような「発見」があるのも面白い。

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 その他、天皇・皇族の定義にはじまり、日本神話とのつながり、皇位継承の歴史や御所の変遷といった「天皇・皇族の基礎知識」に加え、即位儀礼や宮中の祭祀、行幸などより具体的な天皇の日常を知ることができる「天皇・皇室の役割と祭儀」の項も。

 ちなみにテレビ報道では天皇皇后両陛下の被災地へのご訪問の様子が印象的だが、実はほぼ毎日のように天皇には公務があり、さらに「祭祀」も毎月のように執り行われているという(本には「祭祀一覧」が掲載されている)。

 中でも歴代の皇霊を祀る「皇霊祭」や、元日の午前5時半頃に天皇陛下がなされる「四方拝」といった知られざる重要祭祀は、今上天皇の写真や絵を用いて詳しく紹介されており、天皇という存在の「重み」を実感させられる。

 また、国賓を招いての宮中晩餐会の様子もよく報道されるが、そうした晩餐会はお出迎えからお見送りまで一連の流れはすべて形式が決まっており、晩餐のメインの肉料理は皇室専用の御料牧場で飼育された最上級の羊肉(宗教上の理由で牛、豚を食さない賓客に配慮したもの)…そんなトリビアの数々も興味深いものだ。

 なお天皇制を捉える本書の視線はフラットなので、客観的に「天皇とは何か」をコンパクトに掴める。「ざっくり知りたいと手にとったら、思った以上に詳しくなった」なんて、うれしい誤算がありそうな一冊だ。

文=荒井理恵