こんな仲良し夫婦に憧れる……! 正反対夫婦のほっこりエピソードが素敵すぎ

マンガ

更新日:2020/6/15

『私のおっとり旦那』(木崎アオコ/スクウェア・エニックス)

 永遠の愛を誓った結婚相手とは、笑顔の絶えない日々を送るのが理想だ。だが、結婚もあくまで「日常」なので、問題は降りかかる。

 育った環境や価値観が異なる相手と、同じ方向を見て、日常を作りあげる作業は時にとても難しい。

 しかし、自分独りだけでは思いつかない物の見方を学び、相手の心の広さに触れることが出来た時、結婚は良いものだと、しみじみ感じるのも本当なのだ。

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 Twitterで大人気の夫婦エッセイ『私のおっとり旦那』(木崎アオコ/スクウェア・エニックス)は、そんな紆余曲折ある夫婦の、温かさや愛情にスポットを当てたマンガである。

 登場するのは、大柄でポジティブ、散らかし屋で、おっとりした天然の「旦那」さんと、せっかちで気難しい、綺麗好きの「私」。二人は趣味も考え方も異なる正反対の夫婦なのだが、互いの価値観を否定せず、長所を生かしながら、ほのぼのとした日常を送る様子が印象的だった。

 中でもひときわ心に残ったのは、旦那さんが何度も、ギスギスした空気を一瞬で変化させていたことだ。

 例えば、「私」が徹夜明けの原稿執筆中でボロボロになっている時。旦那さんは部屋のドアを開けるやいなや「クワガタすき?」と尋ね、リビングに来るように促す。その後、二人で、網戸に止まるクワガタを間近で眺めて「この辺クワガタいるんだねえ~~!!」と驚き、ギスギスした空気を旦那さんがほっこりさせていたマンガは、とても印象的だった。

 また、喧嘩をして「しばらく口もききたくないッ!!」と、「私」が怒った際、旦那さんはいきなり冷凍庫から「私」の「ジャイ●ントコーン」を取り出し、風呂場へダッシュ。「私」の目の届かない場所へアイスを隠してしまう。5分後、「ねえどこに隠したの!? 私のジャイ●ントコーン!!」「溶けちゃうから!早く!!」と、旦那さんに詰め寄り、彼はそれを聞きながら静かにお茶を飲んでいる……というマンガもあるのだが、こちらも、旦那さんのお茶目な一面に笑みがこぼれた。

「私」は、波瀾万丈な家庭で育ち、旦那さんと出会うまで、とにかく運が悪かったのだと語る。しかし、彼と出会い、波乱続きだった「私」の人生におもしろおっとりな平穏が訪れた。

 本書は終盤に、描き下ろしで「おっとり旦那との大喧嘩」も収録されている。

 ある日「私」は、旦那さんが自分の理想とかけ離れていた一面があることを知って驚愕する。ショックのあまり「私」が旦那さんを置いて家出してしまう話なのだが、その波乱すらも、「夫婦は二人でいることではなく二人で作っていくもの」という気付きが描かれており、絆がより強まったように思えて、心に染み入るものがあった。

「私のどこが好きなの?」と尋ねると「こころ!」と返した旦那さん。そんな素敵な夫婦のエピソードは、日頃つい忘れてしまう、家族の尊さを思い出させてくれた。

 これは筆者の意見だが、夫婦でい続けることは、けっこう大変だと思う。思い通りにならないこともたくさんある。

 だがそれ以上に、二人一緒にいるからこそ見える「新たな景色」や、享受できるものがあるのも事実だ。お腹を抱えて笑える日常も、傷付いた時に励ましてもらえる優しい空間も、やっぱり夫婦でいるからこそ。

 本書は、愛や優しさがたくさん詰まっているだけでなく、さりげないがとても大切な、夫婦円満の秘訣も描かれている。ぜひ読んでみてほしい。

文=さゆ