「普通の呼吸」で人生を変える―運動以外でも大活躍する「呼吸」のパワー

健康・美容

2019/2/18

『「呼吸力」こそが人生最強の武器である』(大貫 崇/大和書房)

 私たちが誰でも1日に約2万回している、命を保持するのに不可欠なこと。それが呼吸だ。『「呼吸力」こそが人生最強の武器である』(大貫 崇/大和書房)は、呼吸に対する自分なりの心がけを見つけ出す「力」を読者に与えてくれる。

 人間の活動の基盤には呼吸があり、腰痛や肩こりも呼吸に関わりがある。当たり前のようにしている呼吸を改善すると、体調だけでなく人生も変わる。ジム通い、ヨガ、ピラティスなどがポピュラーとなった今、そうした考えはかなり普及したように思える。しかし、様々な運動法・呼吸法があるため結局どうしていいかわからない。そう感じたことはないだろうか。MLBやNBA下部リーグでも指導経験がある、アスレチックトレーナーの著者は、安易に「これをやればOK」と提示せず、分析的にアプローチする。

要するに、正解の呼吸とは、「状況に応じてうまく呼吸ができるということ」です。これを私たちは「ニュートラリティ」という言葉で表現しています。ニュートラリティとは、簡単にいうと、どちらにも行ける能力があるということ。

 例えば、疲れた時に息が切れるのは、通常の呼吸から考えるならば不自然な呼吸がその状況に必要とされるからだというふうに考える。不自然な呼吸が、状況を加味すると自然になり得るということだ。

 本書はこの「ニュートラリティ」を軸に、常識を疑ってかかる。例えばかっこいい腹筋を象徴する「シックスパック」は、呼吸を邪魔するリスクがあるという。周囲の筋肉を鍛えずにそこだけを過剰に鍛えすぎてしまうと、胸郭や骨盤がコントロールを失い(ニュートラリティを失い)、息がうまく吐けなくなってしまうからだ。

 多くの人にとっては、腹筋100回よりも、ハイハイの体勢で息を吐きながら100歩進むほうが良い呼吸のサイクルを生み出せるという。素人目で見ると、腹筋のほうが「やってるっぽさ」は出るだろう。しかし、背中を丸めて息を吐けるハイハイのほうが呼吸の「ためになる」のだ。

いわゆる猫背のイメージである「背中を丸める姿勢」は、必ずしも悪ではありません。
適切に背中を丸めると、緊張状態がとれ、呼吸しやすくなります。浮き上がっていた肋骨を下げる効果も期待できます。

 もう一つ本書で繰り返し説かれているのは、現代人は基本的に「吸いすぎ」だという点だ。ペットボトルが水の入った状態では曲げることはできないことを例に、著者は「吸いすぎ」の傾向に警鐘を鳴らす。

 呼吸は自律神経に唯一意識的にアプローチできる手段で、息を吸いすぎると体の緊張を高める交感神経が優位に働き、炎症が起きやすい体になってしまうという。心も体も柔軟な姿勢を取るためには、適切なタイミング・方法で息を吐いて、心身を休ませる副交感神経を優位にすることが大切なのだ。

 簡単に始められるエクササイズ方法がイラスト付きでまとまっている本書は、「きっかけがなく運動が始められない」という方から、日頃から運動している方まで、幅広く指針を示してくれる。

文=神保慶政