透明マントは近い未来に登場する? 歴史を変える「新素材」とは?

スポーツ・科学

2019/2/19

『世界史を変えた新素材(新潮選書)』(佐藤健太郎/新潮社)

 昨年、脱プラスチックストローの話題で賑わった。あるコーヒーチェーン店では、自然分解する非プラスチック製のストローの導入に舵を切るという。次々に登場する新しい素材や材料に、私たちは驚かされる。生活に浸透したペットボトルを、私たちは当たり前のように活用しているが、もし、タイムマシンに乗って大昔にこれを持っていけたとしたら、やり方次第では神の子にだってなれるかもしれない。それほどまでに、素材が持つ力は大きい。

『世界史を変えた新素材(新潮選書)』(佐藤 健太郎/新潮社)は、「新素材」こそが歴史を動かしてきた、と述べる。歴史は変革で動く。そして、本書は、新素材が変革のための「律速段階」だと考えている。

 律速段階は生化学の用語。一連の変化の流れの中で、最も反応速度が遅い段階を指す。例えば、車で目的地に向かうとき、全体の大半を渋滞区間を抜ける時間に費やしてしまうと、いくら渋滞区間以外を速く走っても、所要時間はさほど変わらない。このとき、渋滞区間が律速段階ということになる。

 新素材は律速段階である。この理由は、他の変革要因に比べて、圧倒的に新素材が登場しにくいからだ。だからこそ、新素材がひとたび登場すれば、イノベーションが一気に加速する。レコードが一気に普及したのも、それまでのシェラックというもろく摩耗しやすい樹脂に代わって、丈夫で軽く、保存性に優れ、量産可能なポリ塩化ビニルが登場したことによる。

 人類は金、鉄、紙、ゴム、アルミニウム、プラスチックと、新素材を生み出すことで変革を起こしてきた。では、これからの未来、どのような新素材が生み出されていくのだろうか。

 本書は、例えば近い未来、メタマテリアルという「光の屈折率を“マイナス”の数値にする」素材によって、透明マントが実現するかもしれない、と考えている。

メタマテリアルで通常の物質を覆うと、その後ろにある物体に反射された光はメタマテリアルの表面を回り込み、見る者の目に届く。

 見る者は、メタマテリアルに覆われた物体は目で感知できず、後ろにあるものがそのまま見える。これは、すでに光よりも波長が短い電磁波では実験が成功しているとのことで、あとは可視光での成功を待つばかりだという。人々の生活や、世界の軍事バランスに与える影響は想像すらできない。

 さて、AIという単語をあちらこちらで見かけるようになったが、新素材にもAIが絡んでくる。新素材は、多くの有能な研究者が、長い時間をかけて、各国で研究・開発されてきたが、ここにAIが加わってくる。

「マテリアルズインフォマティクス」という手法がある。過去に作り出された材料の各種データをコンピュータに学習させることで、新たな性質をもった材料を予測しようというもので、すでに2011年からアメリカで、後年、中国で、そして2015年からは日本でも進められている。

 割れても元に戻る陶器、小さく折り畳めるガラス、そして、中身を飲み終わった後は消えてなくなる容器…。近い未来に登場する新素材で、私たちの生活は一変しているかもしれない。

文=ルートつつみ