性被害や誘拐から子どもたちを守るには? 親子で一緒に読みたい絵本『とにかくさけんでにげるんだ』

出産・子育て

公開日:2019/4/5

『とにかくさけんでにげるんだ わるい人から身をまもる本』(ベティー ボガホールド:作、河原まり子:絵、安藤由紀:訳/岩崎書店)

 幼い頃、「知らない人にはついていっちゃダメだよ」と親や先生から教えられた。「こわい人たちは『飴をあげるから』と誘ってきます」と言われ、まじめな私は「飴だけには気を付けよう」と固く決意していたのだが、道を聞かれたときに、すっかり気を許して案内してしまったことがある。

 幸いにして、その人はわるい人ではなかったからいいものの、誘拐犯だったら私は今頃どうなっていたのだろう。そう思うと同時に、私が大人だったら、どのようにして子どもに言って聞かせればいいのだろうということも考える年齢になった。親であれば、自分の子どもが危険に晒されるのは避けたいに決まっている。避けたいに決まっているのだけれど、どう伝えるのがベストなのかわからないという大人は、私を含めて多いのではないだろうか。

 そんな大人たちに向けたひとつの答えとして、『とにかくさけんでにげるんだ わるい人から身をまもる本』(ベティー ボガホールド:作、河原まり子:絵、安藤由紀:訳/岩崎書店)をオススメしたい。

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 これは、子どもが性被害や誘拐などの危険な目に遭わないようにするための絵本。アメリカの教育家であるベティー・ボガホールドによって書かれ、子どもを暴力から守るグループ「CAP」を立ち上げた安藤由紀氏が翻訳した。デパートで迷子になったとき、公園やマンション、ホテルで知らない人に話しかけられたときなど、ありとあらゆるケースが子どもの視点で描かれている。

 盲点となりやすい「親戚のおじさんの家でおじさんにからだを触られたとき」が盛り込まれている点も、この絵本の特筆すべき点だ。中学生女子への性被害の約半分は、親や教師といった何らかのかたちで見知っている人だというデータも出ている。「知らない人についていってはいけない」という指導でカバーできない範囲をも、この絵本は網羅してくれているのだ。

 また、この絵本の最後には、ベティー・ボガホールドから大人たちに向けたガイダンスも書かれている。「子どもたちに教えてほしいこと」や「性被害のサイン」、「子どもが性被害を受けてしまったとき」など、私たち大人が知りたかったことが箇条書きで簡潔にまとめられている。

 普段から「大人の言うことを聞きなさい」という教えを受けている子どもこそ、悪意のある大人たちに利用されやすい。もちろん、大人のいいつけを守ったり、人を信じたりすることは必ずしも悪いことではないのだが、万が一のときには子どもが危険を察知し、逃れられるような判断基準を培わせてあげることが大切だ。

 私たち大人の大半は、子どもを危険な目に遭わせたくないと思いながらも、本当に適切な対処法を知らない。だからこそ、実際に子どもが危険な目に遭ってしまったときにパニックになるのは子ども以上に、私たち大人なのかもしれない。

 しかし、いろいろなことを知らず、力がなく、理不尽を引き受けさせられる子どもを守ってあげられるのもまた、私たち大人なのだ。

文=佐々木ののか