ゆとり世代のメタファー?「闘い」を知らない神々は、世界の危機にどう対処するのか

アニメ・マンガ

2019/2/23

『平穏世代の韋駄天達』(天原:原作、クール教信者:作画/白泉社)

 平穏は、とてもありがたいものだ。なんの心配もいらず、なにも恐れることなく、ただ明日が来るのを待つことができる。しかし、そのように呆けている最中、平穏を揺るがすできごとが起きてしまったとしたら、「平和ボケ」した者たちはどうするのだろうか。

 現在、「ヤングアニマル」で連載中のバトルマンガ『平穏世代の韋駄天達』(天原:原作、クール教信者:作画/白泉社)の主人公たちは、まさにそんな存在だ。本作は、天原が無料WEB漫画サイト「新都社」で連載していた同名作品が原作。連載時にはUU500万PVを超える人気作だったが、2016年を最後に更新が途絶えていた。そして、2年以上の時を経てクール教信者が作画を担当し再始動した。

 本作の舞台となるのは、魔族と神との熾烈な闘いから800年が過ぎた、とても平和な時代。過去に世界を救った神「韋駄天」たちも、実にのんびりと日々を過ごしている。

 主人公であるハヤト、イースリイ、ポーラも、そんな韋駄天の一族。ハヤトこそ師匠の元で特訓に明け暮れているものの、イースリイは読書に夢中、ポーラは動物たちと触れ合うことに喜びを感じている。彼らは「闘い」を知らない。だからこそ、自分の好きなことに時間を費やし、心穏やかに暮らしているのだ。

 しかし、そんな彼らの前に再び復活する魔族。そして、欲望のために殺し合う人類たち。永遠に続くと思われた平穏が崩れようとするとき、ハヤトたちはどう動き出すのか。

 単行本第1巻では、ハヤトたちの日々とともに、不穏な動きを見せる人類や魔族の姿が描かれる。その筆致は勢いがあり、王道の「少年バトルマンガ」然としているようにも映る。ところが、ラストで作風に急展開が見られる。陵辱される聖職者。人類同士の醜い争い。神VS魔族という図式に人類が加わり、世界の行く末はこの三すくみに託されることとなる。

 ハヤトたちは自身のことを「平穏世代の韋駄天だ」と自嘲する。ゆえに、「なにもしない」と。この言葉はそのまま、ぼくら読者へと跳ね返ってくる。戦争の記憶も遠い昔。明日が約束された世界で生きるぼくたちは、「生」をかけて闘うことを知らない。だからこそ、生と死に直面したハヤトたちどういう決断を下すのか、気になって仕方ないのだ。

 ある種、現代の若者たちのメタファーとも読める本作。平穏が壊されたとき、自ら立ち上がるのか、誰かに救いを求めるのか。ハヤトたちが出す答えからは、きっと目がそらせないだろう。

文=五十嵐 大