過度な「恩返し」は逆に迷惑!? 誰もが知ってる「あの物語」がスゴイことに!

マンガ

公開日:2019/2/27

『むか~しむかしの 子供に読ませなくてもいいお話集(1)』(柘植文/講談社)

 テレビアニメ『まんが日本昔ばなし』の語りで親しまれた市原悦子氏が先日、亡くなられた。この作品で多くの昔話を知った世代としては、非常に残念である。今後は我々が日本の心を受け継いで、昔話を伝えていかねばならないのであろう。しかし、である。『むか~しむかしの 子供に読ませなくてもいいお話集(1)』(柘植文/講談社)には、とてもじゃないが子供には伝えられない「昔話」が満載だったりする。

 本書には日本の昔話だけでなく、世界の童話も収録されている。それはそれでありがたいのだが、無論それは「まっとうな」物語であった場合の話。あくまでこの作品は、作者・柘植文氏独自の「解釈」による物語なのだ。では、お馴染みの「昔話」にどのような解釈がなされているのか、サンプルを挙げてみよう。

●鶴の恩返し(本書でのタイトル「鶴の迷える恩返し」)

 日本人ならば多くの人が知っているであろう昔話。人間に助けられた鶴が「恩返し」に自らの羽毛で布を織るが、正体を人間に知られたため去っていくというお馴染みのストーリーだ。では、この物語をどのように「解釈」しているのか。鶴は恩返しをするにあたって、まず庄屋に相談することに。鶴の恩返しプランを聞いた庄屋は「ちとやりすぎ、という気もするな」と返答する。過度の恩返しは「恩返し相場」を上げてしまい後に続く者が困るだけでなく、最終的に若者の迷惑になるかもしれないというのだ。相談の帰途、たまたま食べずに見逃した毛虫が「恩返し」に現れ、鶴にその身を差し出す。その行為を「重い」と感じた鶴は、庄屋の言葉を理解。「ツボ押し券」を用意して「くちばしでツボを押す」恩返しに決めるのであった。そして物語の最後に記されている「このお話のポイント」は──「お礼が過剰だと相手の負担になるかもしれませんね。」

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●竹取物語(本書でのタイトル「かぐや姫の使命」)

 日本最古の物語ともいわれる「竹取物語」。本書では、物語は月面に宇宙船が着陸したところから始まる。地球と交信しながら船外活動を行なっていた宇宙飛行士たちに近づいてくる人影があった。その人物こそ、年老いてはいるが「かぐや姫」その人。かぐや姫はカタコトの英語を使って、宇宙飛行士たちとのコミュニケーションを図る。彼女によれば、かつて地球に行ったのは月の偉い人に「頼まれごと」をされたからだという。その「頼まれごと」とは「5つの宝」を手に入れること。そう、かぐや姫が5人の公達に求婚されたときに求めた「5つの宝」である。結局その使命は果たせないまま、かぐや姫は月へ帰ることになってしまった。……しかし! なんとその「5つの宝」が、宇宙飛行士の装備や宇宙船と合致していたのである。「これでやっと使命が果たせるわ」と喜ぶかぐや姫。その直後、地球に送られていた宇宙船からの交信は途絶えてしまうのであった……。「このお話のポイント」──「宇宙は謎に満ちていますね。」

 例には日本の昔話を挙げたが、他に王子様と離婚した「白雪姫」や不幸な物語を撲滅しようとする母子に延々と諭される「人魚姫」など、世界中の物語がターゲットである本書。「子供に読ませなくてもいい」というタイトルに偽りなしだが、実は密かに人生訓が隠れていることもある。響く人も結構いるかもしれないので、興味があるならぜひ一読を。

文=木谷誠