「自撮りってウザい?」「なんで遅刻するの?」──そんな日々のモヤモヤは、アスクミ先生に聞いてみよう!

マンガ

公開日:2019/2/28

『アスクミ先生に聞いてみた(1)』(後藤羽矢子/竹書房)

 かの哲学者・パスカルは「人間は考える葦である」と遺したが、人間が生きていればちょっとした疑問などは毎日のように湧いてくるもの。もちろん自力で答えにたどり着けるなら問題ないが、そうでないならやはりアドバイザーが欲しくなるだろう。『アスクミ先生に聞いてみた(1)』(後藤羽矢子/竹書房)は、そういった「日々のモヤモヤ」を抱える学生たちに「アスクミ先生」がいろいろアドバイスをしてくれる、お悩み相談コミックだ。

 とある学校の、今は使われていない旧校舎にその先生はいる──。なんとなくホラーチックな設定だが、そこにいるのは「阿須名久美」先生、通称「アスクミ」先生だ。アスクミ先生は旧校舎にやってくる生徒たちの疑問や悩みを聞き、アドバイスを与えてくれる。持ち込まれる質問は生徒によってさまざまなので、いくつか例を挙げてみたい。

Q1:自撮りってウザい?

 交際中のカップルからの相談で、男子が「デートのときの自撮りがウザい」と主張するのに対し、彼女は「普通だ」というもの。デート中でも5分おきくらいに自撮りする彼女を「自撮り中毒」だという男子に対し、「友達もみんな自撮りしてる」と彼女。アスクミ先生は「こういうのに『正しい』っていうのはない」としながらも、彼女に対し「彼の記憶の中のあなたが、写真撮ってる姿ばかりにならないかしら?」と返すのだった。結局、自撮りの代わりに男子が彼女の写真を撮ることになるというオチがつくのだが、自撮りに限らず他人のことを考えない行動は「ウザい」ということなのだろう。

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Q2:なんで遅刻するの?

 遅刻常習犯の「熊井チコ」を友人に持つ「奥蓮奈」からの相談。チコは蓮奈との約束にいつも遅刻してくる。チコがいうには電車の時間を調べて「駅で待つのがイヤだから」と、5分遅れて到着する電車を選んでしまう。かたや蓮奈は「早く着かないと不安」で10分は早く来てしまうのだ。時間のサバを読んだりペナルティを課したりしても効果はないのだという。アスクミ先生は「遅刻癖は完全になくすことはできない」とした上で、「工夫して受け入れる」か「つきあいをやめるしかない」と回答。そういえば私にも遅刻癖のある友人がおり、それに辟易してつきあいをやめたことがあった。しかしいつしか関係は復活し、現在もつきあいは続いている。まあ人間関係なんて、そんなモンだ。

Q3:いい人なのに何故嫌なんだろう?

 優しくて気配りのできる「いい人」の「北野さん」を友人に持つ「宇座見タエ」だが、なぜか彼女を「ウザい」と感じてしまうという相談。例えばタエが読み間違えをすると北野さんはちゃんと指摘をしてくれるのだが、後々までその話題を持ち出してきたり、遅刻をしても怒らないが「あたしでよかったね」というひと言がついてくるのだ。アスクミ先生は北野さんを「ネガいい人」だと判断。「ネガいい人」とは「『いい人』である自分が好きで、いい人であることで相手より上になった気でいる人のこと」だという。もし周囲に「やたら恩着せがましい人」や「自分がいないとダメだと相手に思わせる人」がいたら要注意だ。かつてはアスクミ先生もそういう人間であったが、友人からのひと言でそれを自覚。そのひと言を聞いたタエは「北野さんてお母さんみたいだよね。あたし…北野さんの娘じゃなくて、北野さんの友達になりたい」と告げるのだった。無自覚な「ネガいい人」は結構多そうだが、友人関係は対等でなければ長続きしないだろう。

 生徒たちの相談に、自身もいろいろ迷いながら回答していくアスクミ先生。そしてそれは、読者の相談に対しても同様だ。単行本のカバーを外してもらえれば、本体に読者からの質問が掲載されていることに気づくはず。そう、誰からの質問でもアスクミ先生は答えてくれるだろう。今は使われなくなった旧校舎で──。

文=木谷誠