暴力にリストカット、ハニートラップ…「生涯童貞」の地味な教師が問題児ばかりの女子クラスを更生!?

マンガ

公開日:2019/3/2

『1年A組のモンスター』(英貴/一迅社)

 女子同士のヒエラルキーやマウントの取り合いは非常に面倒だ。

 大人になるとそういった人との距離の取り方も多少は上手くなるのだが、狭い教室内で過ごすことが多い学生だとそうはいかないことが多いのではないだろうか? おまけに、クラスメイトはなんとも強烈で陰湿な問題児ばかり揃っているとなれば、その空間はまごうことなき「地獄」と化す。

『1年A組のモンスター』(一迅社)は、そんな問題児ばかりのクラスに赴任してきた教師・自見太郎のマンガである。

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 作者は『男子高校生を養いたいお姉さんの話』の英貴先生。本作では、担任がすぐ辞めていくモンスター揃いの女子校のクラスに赴任するやいなや、異常な真面目さで生徒に向き合い、全く動じない教師をシニカルに描いている。

 物語は、自見先生がトラブルだらけの1年A組にやって来た日からはじまる。周りの教師は、自見先生の非常に地味な外見と若いルックスに驚き、「すぐに辞めるだろう」と仕事ぶりを期待していなかった。

 だが彼は、A組での自己紹介の際に、いきなり「先生って童貞ですかぁ?」と質問されても、顔色ひとつ変えず「はい そうですよ 先生は生涯童貞 生涯教師です」と答える。

 また、これまでの担任に数々の嫌がらせを行い、辞職に追い込んだ雑誌の大人気JKモデル・花中桃は、自見先生に、授業中にジュースをかけ、放課後に呼び出された生徒指導室では、下着姿で待ち構え、暴行事件を捏造しようとするのだが……。それを見た自見先生が突如として裸になり、桃に襲われたフリをして大声で助けを呼び、返り討ちにするシーンは圧巻だった。

 結局桃は、自見先生に改心させられる。その後、授業に真面目に出席するようになり、彼のことは気になる存在にまで格上げされるのだが、それがきっかけで、1年A組のボスたち4人に目をつけられ、いじめのターゲットにされてしまうのだ……!

 しかし、本書は女子校生同士のいじめが描かれているにもかかわらず、不快感がない。第2話で、親が政治家や財閥だというボス4人から、桃は数々の嫌がらせを受けるのだが、彼女は自己肯定感が非常に高く、口癖は「桃は超カワイイ」である。ブスと言われても気にすることはない。

 また、ボスたちに唆され、教師の前でリストカットをして、屋上から飛び降りようとした狂気をはらんだ保健室登校の生徒・万里(ばんり)も、自見先生が身体を張って守ったことで、落ち着きを取り戻す。そして、桃と毒舌な本音を言い合う友人同士になるのも印象的だった。

 自見先生の教師としての観察眼や力量は確かなようだ。だが、1巻の終盤では、同僚の教師が、ネットで自見先生について、不穏な過去が書き込まれているのを発見する。また、ボス4人組も新たなトラブルを仕掛けてくる。

 女子たちの花園で起こる激しい争いや、剥きだしの本音に惹きつけられるのはもちろん、生徒のはるか上を行く、ある意味“本物のモンスター”である自見先生の正体も非常に気になる。強烈なキャラクター揃いの美少女たちと、地味で真面目な教師との闘いを、ぜひ読んでみてほしい。

文=さゆ