資本主義の正体見たり! そこから浮かび上がる商売の本質とは?

公開日:2012/4/15

資本論 -まんがで読破-

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:マルクス企画・漫画 価格:400円

※最新の価格はストアでご確認ください。

漫画で読破シリーズの『資本論』ですね。資本主義を理解するには避けては通れない教典です。ですが、資本論をちょっとかじりたいというライトな読者がとっかかるにはちょっと敷居が高いんですよね。実は僕もそんな口なんです。原作である『資本論』にも一度も手をつけたことがありません。ですがこの本ならば、その「資本論」がストーリー仕立てになっていて、キャラクターの行動を通して理解することができるのでとてもとっつきやすいものになっています。何よりも漫画、つまりビジュアルがあることで一層その理解を助けてもらえます。

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「資本主義の支配のもと、社会はひとつの“巨大な商品の集まり”となる」
これはキャラクター紹介の冒頭で添えられたキーワードです。この本質をチーズ職人の息子、ロビンは嫌というほど味わうことになるのですが、本書で描く構図は「労働者」と「経営者」の二項対立にとどまらず、そこに「オーナー」という存在が加わることで資本主義の持つ理不尽さをこれでもかと見せつけてくれます。

物語はロビンのチーズを精製する技術を買って、ダニエルという資本家が「工場で大量生産しないか」と持ちかけるところから始まります。もともとロビンは貧しさゆえに母を亡くしてしまったという生い立ちで、若き彼はお金への執着が人一倍にありました。出来ることなら工場を経営したいと願う彼を、父は「中間の暮らしこそ人間にふさわしい」とロビンを思いとどまらせようとしましたがロビンはダニエルの申し出を受け入れ工場を経営することになります。そしてロビンは経営者として利益を出さなければいけない責任と労働を使役する立場のストレスの板ばさみにさいなまれていくのです…。

これを読んで僕は「経営者も雇われの身なんだなぁ」とつくづく考えさせられました。資本主義って何で資本主義っていうか知ってますか? それは資本を持っている者が一番強いからなんですよ。別に経営者としての才覚や職人技術なんかはすべて資本家の手の上で踊らされているに過ぎないと知って何だか凹まされました。でも、それが現実なんですよね。そしてその現実の中で主人公ロビンももがき苦しみながら本書では経営者としてどうあるべきかを模索していくのです。

正直、漫画だと思って侮っていました。原本を希釈しただけの導入書かと思ったらまったくの誤解ですよ。その都度入るキャラクターの経営に対しての解説などもスラスラと頭に入ってきます。資本主義の問題提起をしっかりと人間ドラマに落とし込んだ骨太の導入書です。学校の教材にしてもいいくらいの出来で、こんな教材で授業が受けることが出来たら面白いだろうなと思います。本書はこのまま続・資本論へと続くので、これをご覧になった方は、ぜひ続きを読んでみて下さい。経営者として一定の富と名誉を獲得したロビンの結末が書かれています。きっと彼の決断に同情することができるでしょう。


ロビンの父は、お金に執着せず情を大切にします。これがロビンを不安にさせてしまうのですが…

ロビンの父が考えるお金の本質です…

「中間の暮らしこそ人間にふさわしい」とても考えさせられる言葉です

ロビンの友人のヘレンの貧困さに、心を揺さぶられるロビン。このときから彼の中で「このままじゃいけない」という考えが芽生えるようになります

資本家ダニエル、彼が欲するのは金になる技術なのです (C)バラエティ・アートワークス/イースト・プレス