4人の我が子に歯を磨かせなかった歯科医が実証! 虫歯予防のための「食生活」3か条

出産・子育て

2019/3/10

『子どものむし歯予防は食生活がすべて』(黒沢誠人、幕内秀夫/風濤社)

 毎日の育児で真剣に悩んでいることがある。2歳の息子の歯磨きの後に行う“仕上げ磨き”だ。とにかく言うことを聞かない。まず口を開けないし、開けたとしても手で歯ブラシをもぎ取ろうとする。手を押さえると今度は足でこちらの顔を蹴り上げてくる。毎晩プロレスのような格闘である。虫歯は防いであげたい。だが、この格闘はつらいし、小さな体を押さえつけることに罪悪感もある。そもそも、こんなに頑張っても虫歯ができるのは、歯磨きに問題があるのだろうか。

 ママ友と話しても、必ず出てくるのが歯磨きの悩みだ。何か耳寄りな情報はないかと、『子どものむし歯予防は食生活がすべて』(黒沢誠人、幕内秀夫/風濤社)を読んでみた。著者の一人である歯科医の黒沢誠人氏は、多くの歯科医が歯を守るために歯磨きをすすめる中で、「子どもの虫歯予防に歯磨きは必須ではない」と断言している。どういうことだろうか。

 著者は、「虫歯を防ぐための3か条」として下記をあげている。

1.おやつは時間を決める
2.夕食前の1時間は飲食しない
3.甘い飲み物を冷蔵庫に買い置きしない

 つまりこれは、ダラダラ食べを避け、規則正しい食生活を送る、ということのようである。ダラダラ食べが虫歯になりやすいという話は、一度は聞いたことがあるかもしれない。これには、虫歯ができるまでのメカニズムが関係している。

 食べ物を口に入れると、虫歯菌が作り出した酸が、歯の表面にあるミネラルを溶かし始める。これを「脱灰」という。それをやっつけてくれるのが唾液である。20~30分ほどかけて、食べた後の「虫歯になりやすい状態」を、「虫歯になりにくい状態」に戻していく。つまり、ダラダラ食べをすると、なかなか口腔内を正常な状態に保てず、虫歯になりやすい状態が長く続いてしまうのだ。特に就寝中は唾液の量が少なく、この状態が長く続くことから、寝ている間にせっせと虫歯が作られていく。なんとおそろしい。

 では、なぜ歯磨きをしなくていいのか。それは、細菌が入りこんで虫歯になるのは歯の内側の「象牙質」だから、表面が溶けて象牙質が露出することがなければ、虫歯にはならないのである。どれだけ丁寧に歯磨きをしても、「脱灰」を頻繁に起こすような食べ方をしていては、虫歯は防げない。つまり、歯磨きは虫歯予防には必須ではない、ということになる。

 本書がすごいのは、その事実を著者自らの研究で証明したことだ。4人のお子さんを中学生まで歯磨きさせなかったところ、誰ひとり、1本も虫歯にならなかったという。ただし、大人の虫歯予防にはやはり歯磨きが重要になるため、「歯磨きの習慣をつける」ためには歯磨きをさせてもよかった…とのちに語っている。

 ちなみに、乳歯が虫歯になってもいずれは抜け落ちるから問題ない、と考える人もいる。だが本書によると、虫歯で乳歯が抜け落ちると「あご」が大きくならず、小さなあごに歯が収まりきらなくなって歯並びが悪くなる。それが虫歯や歯周病の原因になるため、やはり乳歯も虫歯になるのは良くないという。

 本書には他にも、虫歯予防に食生活がいかに大切なのかが細かく紹介されている。丁寧に歯磨きをしているのに子どもを虫歯にさせてしまった親御さんは、その謎が解けてスッキリするのではないだろうか。筆者も同じように悩み、歯医者を回ってもその原因をスパッと解決してくれる歯科医に出会えていなかったため、身を以て実証してくれた著者に感謝している。歯科医による著書といっても、お子さんたちの経験をもとにした話は読みやすく、親しみを込めて読むことができた。

 子どもに虫歯ができてしまうのは、歯磨きのせいではなく、「どう食べるのか」に問題があった。歯磨きの習慣づけは必要だけれど、格闘技のような“仕上げ磨き”は、もう少し手を緩めてもいいかもしれない。

文=吉田有希